「はあ……」
最近、私はため息をつくことが多い。
「おぬし、悩んでいるようだな。よし、だったら俺が聞いてやろう。今ならカツラップもついてくる、YO!」
「ついてくる、YO!…じゃ、ねぇぇぇえええ」
私は何も知らずに声をかけてきたヅラを、教室の端へ吹っ飛ばした。
ため息の理由、それは紛れもなくコイツなのだから。
コイツ…、桂小太郎は、史上最強のバカ。いつだってクラスのみんなからは相手にされていないし、訳の分からないペットをつれてるしで、本当に謎につつまれたヤツだ。
私だって最初は“ただの変なヤツ”としか捉えていなかった。
もちろんエリザベス=訳の分からないペットというイメージはすぐに払拭された(エリザベスは愛着があるし)。
でもコイツだけはいまだ謎のまま。いつまでたっても理解できない。
のに、だ。
何か目で追ってるし知らない女の子としゃべってるとイラッとするし、これはどうも恋くさい。
認めたくは、ないけど。
「…!名前!」
「ん?な、何?」
HR中、ぼーっとしていると隣の席の妙ちゃんに声を掛けられた。
「今の話聞いてた?あなた今日の大掃除、例のロン毛と二人で屋上らしいわよ」
「屋上二人でやんの?あんなに広いのに?」
「掃くだけでいいから2人でいいんですって」
よかったわね、二人きりよ、と笑う妙ちゃんは応援してるというより面白がってるみたい。いや、分かってくれる友達がいるのは大事な事だけど。
「はい説明は終わったから早く自分の場所に行けー」
せんせーは相変わらずのかったるそうな声でそう言って、教室を出ていった。
「行くかぁ…、」
私はひとり小さく呟き、教室を後にした。
「ああ、やっぱりそうなりますか」
屋上に着いた、と思ったら。
なんだコレ。
まぁ、大方予想はしていたけれど。
そこには赤いオーバーオールを着たヅラの姿が。
しかも私が「何やってんの」と聞くとほうき片手に「俺はしがない配管工さ」と流し目をするもんだから、私は呆れてまたため息をついた。
「なんだ、またため息をついているではないか。聞いてやると言っておるだろう?」
こんなバカなヤツでも、こうやって優しく笑って私の顏をのぞきこんだりする。だから惚れるんじゃないか。
「別にーヅラには絶対言わない」
…てか言えねぇぇえ!
「ヅラじゃない、桂だ!」
「はいはい」
もうめんどくさい。
やってらんない。
こうなりゃヤケだ。
「私、好きな人がいるの」
「好きな人?…だれだ?」
私は赤いオーバーオールを来たバカを指さした。
「もしかして…」
やばい、
今更恥ずかしくなってきた
「名前もマリオさんが好きなのだな!?」
「…は?」
「やっぱそうであろう。赤いオーバーオールを華麗に着こなすなんて普通の人間にできるような事ではあるまい、」
気付け、バカ
(だから、聞いて!?私はヅラが…)
(ヅラじゃない、桂だァァァアアア!!!!!!)
(だから聞けってえええ!!!)
思いが伝わるのはいつの日やら。
20100329 title:remix!
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