雨。
それは時に人を不幸に陥れる自然現象。
そして私は今、その不幸に陥れられている。
見廻りの途中、駅前を通った時に駅員さんに呼び止められた。なんでも、痴漢が出たのだが本人が認めないので来てほしいだとか。
正直めんどくさかった。それは総悟も同じらしく、彼もまためんどくさそうな顔をしていた。でも、仮にも真選組をしている私たちに断る事ができる訳なんてない。
結局嘘をついていたらしくソイツが痴漢をした、という事で片付いたけれど。
かかった時間は2時間30分。その短いようで長い時間の内に、曇りだった空模様はすっかり雨に変わっていた。
「そういや結野アナが雨降るって言ってたな…」
「雨が降る予定の時間の見廻りの担当は土方さんなんですがねィ」
駅の出口で呆然とたちすくむ私たち。そう、私たちは傘を持っていない。
「あ、あそこのカップル相合い傘してる」
「うわあマジだしかも好きとか言ってやすぜ」
「うわー好きとかんな軽々しく言っちゃってー」
「え?」
総悟はきょとんとした顔をした。けど、すぐにいつものにやっとした顔に戻った。
「もしかして土方のヤロー、名前に好きとか言わないんですかい?」
「え?あーそうだねあんま言わないね」
「へえ。言われたくないんですかぃ」
「べつにー」
私は土方さんに好きって言ってもらいたいとか思わない。でも、多分総悟に言ったところで分かんないんだろうなあ…
「おい」
突如聞こえた声に私が顔をそちらへ向けると、右手に自分の傘を、左手に傘二本を持った土方さんが立っていた。
「帰るぞ」
土方さんはそれだけ言って手に持った傘を私たちの方へ出した。
「へえ、土方さんにしては気がきくじゃないですかィ。じゃあ二本もらっていきやす」
総悟はいつもの悪い顔で傘を二本取ると、二人は相合い傘で帰ってくだせえ、と言って雨の中を帰っていった。
「相合い傘…」
今だ状況をいまいち掴めない私をよそに、土方さんは私の腕をひっぱり私を無理矢理傘の中へ入れた。
「寒ィから早く帰るぞ」
「わ、ちょっと待って!」
歩くのが早い土方さんを追いかける。
それに気付いた土方さんは、速度を少し遅めてくれた。
「さむいね」
「おう」
「雪になんないかな」
「バカ。余計寒くなるだろーが」
「雪が降ったら絶対楽しいよ。みんなで雪合戦したい」
「はっ、ガキじゃあるめぇし」
私が空を見上げると、土方さんも同じように空を見上げた。
ふと土方さんを見ると、左肩が若干濡れていた。多分、多分だけど、私が傘からはみ出ないように傘をこっちばかりに寄せているから。
そう、これだよ総悟。
これがさっきの質問の理由。
キレイな言葉はいらないの
不器用な土方さんの優しさだけで、
気持ちは充分伝わってるんだ
(ふふ、)
(?)
(ありがとう)
(……ああ)
20100213 title:heaven's blue
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