「分かった!ここだ!」
「違ぇよ。これとこれをここにまとめて写すんだ」
土方さんは左手の指でタバコを挟みながら目の前の書類をトントンと叩く。
「だってさっきはこっちだったじゃん!」
「だから、今度は紙が違うだろーが」
難しい。
非常に、難しい。
最近、書類の形式が変わった…らしい。それで、役所のお役人さんがこの前隊士全員に説明してたみたいなだけど、私はどうも聞いていなかったらしい。
それで、どうしても分からないから土方さんに教えてもらっている訳でございますよ、ええ。
「お前な…そもそもなんで聞いてねぇんだよ」
「多分眠かったんじゃね?うん、きっとそう」
そういうと土方さんは大きくため息をついた。
そんな呆れなくたって…!
「でももう疲れたよ、パトラッシュ」
「誰がパトラッシュだ」
「土方さん、休憩しよ」
私はそこまで言うと、それまでに使った書類を全部まとめて机の隅に置いた。
「休憩って…なにすんだ」
「……じゃあ外の空気を吸いに。土方さんもいこっか」
私は土方さんの制服のすそを無理矢理引っ張って立たせて、縁側へと押し出した。
「わー日光だああ!」
外はすごく気持ちいい快晴だった。
「日光って……お前は光合成でもしてんのか」
「あ、見て!ヒマワリ育ってる!」
夏が近づいている証拠だ、とでも言っておこうか。汗ばむ陽気に育ちかけのヒマワリがよく映えている。
「大分育ったね…かわいー!」
家庭でも手軽に育てられるとかいうひまわりだから、きっと成長しきってもたいしたおおきさにはならない。
でも、そこがまた可愛かった。
ひまわりの近くに行きしゃがみこむと、土方さんも隣にしゃがんだ。
「かわいいね」
私は土方さんの方を覗き込みながら言った。すると土方さんは、私の頭にポンと手を置いて、少し微笑みながら「ああ」と言った。
うう…かっこいい…
「今咲いてんのは一個だけどさ、他のもきっともうすぐ咲くよね?」
「そうだな」
「咲いたら写真撮りたいね」
「そうだな」
「なんか……幸せだね」
この言葉を聞いた土方さんは、目を見開いてこちらを見たけれど、またさっきのように笑った。
「……でもちょっと、暑いかも」
「本当でさァ。暑いったらありゃしねぇ」
「総悟!?お前、いつからここに……」
「名前が、日光だとか言い出したあたりから」
「って……最初からじゃねぇかあああああ!!!!!!!」
「幸せそうに「あぁ」とかいってやんの!土方気持ち悪ィ〜」
ケタケタと笑いながらバズーカを打って逃げる総悟を、瞳孔開き具合MAXの土方さんが追いかける。
そんないつもの二人をみて、やっぱり幸せだと思った。
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