寒い。寒すぎる。
あまりの寒さに私の頬はもう熱を持っていないし、手は動きが鈍っている。その上、吐く息は真っ白。
なのに雪は降らない。
せめて、雪が降れば、私のテンションは上がっていくというのに。
この極寒のくせに雪は降らないというツンデレな天候を前に、私は巡回というイジメにあっているのだ。
これも全部、今隣にいる副長のせいだ。
巡回押し付けられた。
職権乱用だ、絶対そうだ。
「ちげぇよ」
「…どこから聞いてました?」
「何も聞いてねーよ。巡回を俺のせいにされてる気がした」
「ご名答」
はぁ、と副長は大きなため息をついた。
その息さえも真っ白。
「寒いですね」
「あぁ」
「巡回ってどうやったら無くなります?」
「どうやってもなくなんねぇな」
「沖田隊長が副長になれば無くなると思うんですよね」
「おい、それ以上は言うな。頭痛くなるから」
副長は心底嫌そうな顔をしてまたため息をついた。
「副長、なんか暖かくなる事して下さいよ」
「はぁ?例えばなんだよ」
「んー…缶コーヒーをおごってくれる、とか」
「おまえコーヒー飲めねぇだろ」
ごもっともだ。
私があんな苦い飲み物を飲める訳がない。
「副長さーん」
「何だ」
「寒い」
「我慢しろ」
「副長がしてるマフラーください」
「やらねぇ」
「死ね土方」
副長は、部下は上司に似るって本当だなと呟いた。
「ったく…仕方ねぇな」
副長はそう吐き捨てると、自分のしていたマフラーを取って、器用に私に巻き付けた。
「へ?」
「もう文句言うなよ」
やばい、何かときめいた。
いつぞやの赤マフラー
(副長寒くない?
手繋いであげよっか)
(…おう)
20100104
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