ル イ ラ ン ノ キ


 8時間のディナー

 

 
夫は、細かい人で、お金には特に厳しい人でした。冷蔵庫にはその日必要な食材しか入れていません。余計なものを買っていると怒る人でした。

今日は夫の誕生日だったので、朝早くにケーキを買い、お味噌汁の具材であるサトイモと葱と油揚げ、それからお魚と、自分のお昼用にお惣菜と、お漬物、夕飯用にアスパラと、ベーコンと、エリンギ、それからもう一品用にほうれん草と、人参と、たまねぎを買いました。

買い物から帰るとすぐに朝食作りに取り掛かります。
大きな物音を立てないように気を配りながら2人分の朝食を作り終え、夫を起します。
夫は歯を磨いてから、一緒に食事を済ませ、今朝私が買ってきた今日の食材のチェックをします。ケーキを見て嫌な顔をし、私の頬を叩きました。
「余計なものを買ってきやがって」と呟くように言い、仕事へ行く準備をして「行ってきます」も言わずに会社へ行きました。

私は頬に痛みを感じながら夫と自分の食器を洗い、洗濯物や部屋の掃除を始めます。
お昼になるとワイドショーを見ながら独り寂しく昼食を食べ、お片づけをします。
 
夫は7時頃に帰って来て、いつものように夕飯ができるまで一眠りをしました。毎日毎日、疲れているのでしょう。ちょっとやそっとでは起きません。
 
私はお米をといでご飯を炊きながら、アスパラと、ベーコンと、エリンギを使ったおかずを一品つくります。
それからクリームシチューを作ろうとほうれん草と、人参と、玉ねぎと、お肉を刻んで2品目を作りました。
 
作り終えたときには午前3時を過ぎており、8時間近くも掛かってしまったことに苦笑しながら、額の汗を拭いました。
せっかくこれだけ時間をかけて作ったものの、スープが多すぎて独りでは食べきれません。大きめの器に入れてラップをして、お隣さんに少し分けてあげました。
それでも残っているので、結局生ゴミに捨ててしまいました。
 
別腹のケーキは、とてもおいしかったです。
 

end - Thank you

お粗末さまでした。170215
修正日 220427


≪あとがき≫
※ホラーです。
 
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©Kamikawa
Thank you...
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