日常の一コマ。
2021/02/14 14:28
「明日の昼過ぎから3時まで暇な人いない!?」
買い物から宿の部屋に帰って来たアールが一目散に言った。
「俺ひま〜」
ベッドの上で漫画雑誌を読んでいたカイがそう答えた。
「僕はちょっとモーメルさんのところへ行く予定ですが……」
ルイはどうかしたのだろうかと小首をかしげながらそう答えた。
シドは部屋の隅に腰を下ろして刀を磨いており、ヴァイスは窓際の小さなテーブル席で紅茶を啜っている。
「じゃあカイでいいや!」
と、ベッドのカイに歩み寄る。
「じゃあってなんだよ〜…」
と、雑誌から目を離して見上げたカイに、満面の笑みを浮かべたアールが顔を近づけた。
「デートしよ♪」
「え……はい……」
いつもなら大喜びをするカイだったが、唐突すぎて驚きのほうが勝ってしまった。
アールの誘いに興味を示さなかったヴァイスとシドが2人に目を向けた。
「さっき薬局で買い物したらさ、くじ引き券1枚貰ったの。で、お店の前にあったくじ引きしたらなんと…映画のペアチケット当たったんだー! 行ってきていいでしょ?ルイ。そのあとVRCに行くからさ!」
と、念のためルイに確認を取った。
「えぇ、ぜひ楽しんできてください。カイさんも」
「はい……」
カイはパタリと雑誌を閉じ、静かに目を閉じた。
──とうとうこの日がやってきてしまった。アールと俺の熱々デート!なにを着ていこうか。スーツを着ていつもと違う自分を演出してみようか。バラの花を用意しておくのはどうだろう。そんなお金あっただろうか。おやつなんか買わなければよかった。3時まで?できれば夜まで楽しみたいところだが致し方ない。限られた時間の中で、どれだけアールを楽しませドキドキきゅんきゅんさせることができるか、それはこの俺にかかっている。
「カイ? 大丈夫? 具合悪い?」
「いや、私の体は健康そのものだ」
「え、急にどうしたの」
「あす、どこで待ち合わせをする?」
と、渋い顔をしてアールを見遣る。
「待ち合わせ? 一緒に宿出ればいいじゃん」
「アールはおバカなのかい? デートは、待ち合わせが必要不可欠なのだよ」
「なにそれめんどくさ〜…」
完
prev | next
【top】
©kamikawa