企画 | ナノ


部屋に響き渡る声が心地好い。
込み上がる笑いを隠そうともせずに臨也は笑う。暗い笑いが喉を震わせた。
懇願が聞こえた。


「…ひあ…あ…っ、もう、や…!」
「おや、もう終わり?意外と早いね」
「………っ」


大分弱々しくなった声。にやにやと笑みを浮かべながら答えると、涙を流す瞳がぐらりと揺れる。必死に自制を働かせているのだろう。唇を噛んで、解放を求める言葉をどうにか呑み込もうとしている。ぎゅっと瞑った目から、ぼろぼろと涙が溢れた。
――ゾクリ。言い表せない程の高揚が背を駆けあがる。まだ、楽しめる。


「…そうだよねえ。なまえは、このくらい、平気だよね」
「……あ…ぅ…」


一語一語、言い聞かせるように。なまえ自身が放った言葉を投げつけてやると、びくりと肩を震わせて体を縮めた。
そう。平気だと、自分で言ったのだ。

――言わせるのは簡単だったけどね。

人間ではないといっても、この悪魔――なまえは至極扱いやすかった。悪魔とはここまで単純なのかと思ったが、もしかしたらただなまえが単純なだけなのかもしれない。どちらにしろどうでもいいことだ。化け物に興味は無いのだから。しかし、なまえを虐めるのは面白かった。
プライドが高い化け物を屈服させる快感。人間にいいように扱われるなまえの言動は、臨也をひどく楽しませる。

今日は少し強い薬を飲ませて、縛って放ってある。「こんなのも我慢できないの?」と一言告げるだけで、なまえの抵抗はほとんど無くなった。
人間の薬が効くのかどうか分からずに多量に飲ませたが、この様子を見るに効いているようだ。


「ふあ、あっ……ぅ…」


堪え切れない声が漏れる。最初に比べて随分と静かになった。こんなの平気だとか、後で覚えていなさいだとかうるさかったが。プライドばかり高いせいで、いつまでも助けを求められずにいるのだ。
――ああ、楽しい!
悔しそうな目が、苦しそうな声が堪らない。絶対に手は出さない。見ているだけが一番楽しい。
きっとそのうち、それでも耐えられなくなって、なまえは助けを求めてくるのだろう。悔しがるその顔を見つめながら、言ってやるのだ。「平気だって、言っただろ?」

――楽しいなあ。楽しみだなあ!

なまえはどんな顔をするのだろう。驚愕か絶望か羞恥か、あるいはそのどれもか。いくら叫んでも放っておこう。楽しんで楽しんで、最後は泣き出して哀願するまで、手は出さないでいよう。


まだ続くであろう「遊び」に心を踊らせて、臨也は笑った。















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