企画 | ナノ


「何ですかこれ!」
「何って。分かるだろ?目隠し」


面白くて堪らないという風に笑う音が聞こえる。聞こえる、だけだ。なまえの視界は闇に閉ざされていた。ついでに後ろ手に縛られている。そのせいで上手く起き上がれずに転がったまま叫ぶと、臨也がゆらりと動く気配がした。


「いやあ、暇だったからさ」
「わ、私で遊ばないで下さい!ていうか、い、いつの間に…!」
「なまえ、俺が淹れたコーヒー飲んだだろ?起きてる間にこんなこと出来るはずないじゃないか」
「えッ…あ…あ!ひ、ひどい!ひどい…!」


――嬉しかったのに!
臨也が一服盛ったようだ。この妙な眠気はそのせいらしい。


「まあでも、寝てる間も結構楽しかったよ。イケナイコトしてるみたいで」
「みたいじゃなくてしてるんです!」
「アハハ!…猿轡も噛ましてやれば良かったよ」
「…ひい」


情けなく黙るしかない。本気でやりかねない男だということを知っているからだ。玩具扱いは不満だが、自分から弄ばれる理由は増やしたくない。
声が近くまで来た。そろそろ飽きたのだろうか、と思う。玩具扱いは確かに不満だけれど、実際はもう諦めているのだ。いいようにされたのを悔しく思いながら、うるさくないように静かに頼む。


「うー……あの、は、早く、ほどいてくださ…ひぁうっ!?」
「まあ、これがやりたかったんだから、噛ませたりしないけどね」


お願いは途中で遮られた。臨也の手が背中を撫で上げたのだ。びくんと跳ねた体に満足そうに呟いて、臨也は手を動かす。


「視覚を奪うと他の器官が敏感になるって本当かなーと思ってね。ああでも、これはなまえが元々敏感なのかな」
「ひっ!や、やだやだっ…さ、触らないでっ…あっ!」
「ハハ、どっちか分かんないや」
「………っ!」


肌に触れるか触れないかの位置を保ちながら指が這う。視界を隠されただけなのに、気配だってはっきり分かるのに、大袈裟に体が反応してしまう。耳まで隠した布のせいで、臨也の声が聞き取りづらかった。ごうごうと、自分の鼓動と血の流れる音がする。
ふと気付いた。自分は視界を奪われているが、臨也はなんの制約も受けていないのだ。それはつまり、当たり前だが、この姿は臨也にしっかり見られているということで――


「………!? ――や!やだ、あ…っん!」
「なまえ、顔真っ赤だよ?」
「だ、誰の、せいで…!」
「さて、誰のせいかな。なまえが敏感なのがいけないんじゃないの?」


しれっと嘯いて、臨也が目隠しをずらす。涙で少しぼやけた世界で臨也が意地悪く笑った。


「――ほら。もっと遊んで欲しいだろ」


ずるい。ずるい。
悔しくて恥ずかしくて真っ赤に染まった頬を、臨也の指が撫でた。
こんな風にしたのも無理矢理に昂らせたのも自分のくせに、この男はいつだって「私が望んだ」ことにするのだ。
それでも何も言えない。結局は自分からねだってしまうのだから。

勝ち誇って笑う唇。
答えの代わりに、仕返しのつもりでキスをした。













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