企画 | ナノ


好き。なまえちゃんが、大好き。

こんな気持ちになったのは初めてなの。自分自身でもちょっとビックリだよ、まさか私がこんな深夜アニメの女の子みたいな心中になるなんてね。ずっと見てたから私に投影しちゃったのかな。
――ううん。違う。そんなこと、してない。私が許さない。

好き。好き。好き。なまえちゃんが好き。
なまえちゃんがいいの。どこにも行かないで。私のことだけ見て。「狩沢さん」、って呼んで、笑って、笑って、私のそばにいて。もっとなまえちゃんの時間が欲しいんだ。一緒にお買い物とかしたいなあ。そしたら、私の好きなモノいっぱい勧めてあげる!私が好きなモノがなまえちゃんの好きなモノで、なまえちゃんの好きなモノが私の好きなモノ。素敵よね!
なまえちゃんが一番仲が良いのは誰なのかな。私がいいなあ。ずっと一緒がいいの。なまえちゃんがいいの!なまえちゃんじゃなきゃイヤなんだよ。
この想いだけは本当に本物。この世界に向けて私が放つ最高の想い。お願いだよ、他の人のモノになんかならないでね。そんなことになっちゃったら、私、私は――どうなってどうするか、分からないよ?

もし私となまえちゃんに割り込む奴がいるんなら、私はそいつを許さない。たとえそれが誰でもね。ねえ。ゆまっち。分かってる?分かってないよねえ。私、ゆまっちもなまえちゃんが好きなこと、知ってるんだから。今はまだ何もしてこないからいいけど――なまえちゃんに手を出したら、承知しないよ。私がなまえちゃんと一番仲が良くなるんだから。

明日も会えるかな。会えるかな?楽しみだなぁ。明日はお買い物に誘ってみようっと。
好き。なまえちゃんが、大好き―――







「遊馬崎さん」か。うーん、やっぱり名前で呼んでくれるのは、まだまだ先っすかね。いやいやいや、前途多難。というか、狩沢さんのガードが堅すぎでしょ。明らかに俺を敵視しちゃって。いつも通りに笑いながら目の奥が敵意に燃えてるし。なんすかそれ、反則っすよー。なんか漫画かアニメみたいでカッコイイじゃないっすか!なまえちゃんを挟んでバチバチーっと牽制しあい。こんなこと本当にあるんだ。死んだら二次元に行きたいとは思ってたけど、今でも充分二次元的。ああでも、この話は二次元抜きの勝負か。いやー燃えるなー、勝った方がなまえちゃんと一緒権の争奪戦。ゲームみたいに負けたほうが消えちゃえば楽なんすけどねえ。現実はやっぱり厳しいものなのでした。
――だからって、手を抜く訳じゃない。

俺だって、なまえちゃんが、欲しい。
初めて見た時から、ずっと。でも狩沢さんがそれはそれは可愛がってベッタリと――それはもうベッタリと一緒にいたがるもんだから上手くいかない。いやいやいや、俺にもこういう感情が残ってたんすねー。ついでにダークな一面が見え隠れ。
なまえちゃんが笑ってる顔は当然好き。だけど、もっと――もっと、他人には見せない顔が見たいんだ。泣いてる顔とか、蕩けてる顔とか。門田さんにも、狩沢さんにだって見せたことのない、俺の、俺だけの顔が。そのためにはもっと仲良くならないといけない。
――狩沢さんを、負かしても。わお。俺、こんなこと思うようになっちゃってる。ダーク!ダークサイド!
格好なんて気にしていられない。なまえちゃんを奪い取って、染め抜いて、俺だけのなまえちゃんにするんだから。


――さてさて、と。まずは何から始めようかな。







俺は…今、ちゃんと笑えてるのか?
なあ、なまえ。俺は、おかしくないか?普通――だよな?
…大丈夫、か。なまえは笑ってくれてるし、狩沢も遊馬崎も気付いてねえ。
おかしいんだ。一体何がおかしいのかは、自分でもよく分かんねえけどよ、……おかしいんだよ。なまえが近くにいると、自分が自分じゃねえ感じがする。体が得体の知れねえ何かに操られるみてえな――気が付いたら、なまえに手を伸ばしそうになってる俺がいる。

俺は。一体俺は、手を伸ばして、それで………どうするつもりなんだ?なまえに、何をするつもりなんだ?

背筋が寒くなる。俺がおかしくなったらなまえはどうなる?誰が守ってやれる?俺が守るんだ。なまえは、俺が。互いに牽制しあってる狩沢と遊馬崎が、いつなまえに手ぇだすか分かんねえ。
なあ、俺は、普通だよな。どこも…おかしく、ないよな。
まだ笑えてる。まだ守れる。まだ。

本当は分かってる。なまえに手を伸ばすのが、俺自身の意思だってことくらい。けどよ、自分じゃどうしようもねえんだ。なまえに触れたいと思うのだけは、…どうしても消せねえんだよ。いつか傷付けちまうかもしれねえのが、怖い。多分、俺を直せるのは、なまえしか、いねえ。


なあ、なまえ。
俺が本当におかしくなっちまう前に――俺を、救ってくれよ。







「あ…おはようございます!」


人混みの中で少女が叫ぶ。
こちらに走ってくる少女を目に止めて、三人の男女は嬉しそうに微笑んだ。












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