企画 | ナノ
「なあ、どうして逃げるんだ…?」
「…や、っ」
追い詰められた教室の隅。恐怖に駆られるまま走った足にはもう限界が訪れて、冷たい痛みしか感じなくなっていた。力が抜けて座り込んでしまった今、なまえに逃げる術はなかった。
「そりゃあシズちゃんが怖いからだよ。ねえ?なまえ」
折原臨也。
「……うるせえ」
平和島静雄。
「……っ、こないで…!」
二人が会話を交わしながらこちらに足を進めるのを見て叫ぶ。後ろは壁だ。もう、逃げられない。
一体これは何なのだろう。どうして、どうして――
何も考えられないまま、なまえの前に二人が立つ。
見下ろす臨也と静雄の瞳に、びくりと肩が跳ねた。確かな熱と、欲望を孕んだ瞳。こんな視線を受けたことは無かった。
「…ひ…」
「はい、なまえ、捕まえたー…っと」
おかしい。おかしい。
見慣れたはずの教室。あまりにも異常な状況。ひどい違和感を感じた。呼吸が荒くなるなまえを、臨也が心配そうに覗く。
「なまえ、大丈夫?あーあ、シズちゃんがあんなに追うから」
「だからうるせえよ。てめえの方だろ」
「っ…はあっ、あ…や、はなしてっ…!」
臨也が片手をとって、そっと頬に寄せる。肌が触れ合って、絡まる指が熱くて、背筋を寒気が走った。
「なまえ」
「…!ん、」
静雄に名前を呼ばれた。次の瞬間口付けられる。「あ、狡い!」という臨也の声が聞こえた。
震える吐息の合間に、静雄が小さく呟く。
「…くち、開けて」
「や…ん、んう…っ!」
縋るような言葉を拒絶する間もなく、再び唇を塞がれた。息が出来ないなまえを喰らうように、静雄は後頭部に手を添えて更に深く口付ける。
臨也が耳朶を食んだ。抵抗も嬌声もキスに呑まれて消える。囁く声が溶けていく。
「ねえ、俺たちさ、なまえが好きなんだ」
「…っん…!」
「だから――」
漸く唇が離される。いつの間にか制服が乱されて、首筋に刺すような痛みが走った。喘ぐなまえに、二人の声が重なる。
「なまえを、ちょうだい」
震える少女を喰らい尽くしてしまおうと。
二人の獣が、牙を剥く。
100000ヒットリクエスト企画
なうさまリクエスト「来神折原と平和島に狙われる話・微裏」