企画 | ナノ


「人に生まれたのが運の尽きさ」
「人が嫌だとは、言っていません」

彼が笑う。どうして笑われるのか分からない。無言で首を傾げた私を見て、もう一度彼は笑う。楽しそうに。
折原臨也。一癖も二癖もある、私の先輩にあたるこの人は、私のことが好きなのだという。
クツクツと喉で笑いながら、彼は言った。

「いいねえ。君のそういうところが好きだよ!あくまでも冷静で、意地でも機械を貫くところが」
「そうですか」

機械みたいとよく言われる。何をしても無味乾燥な答えしか返ってこない、感情を感じられる部分が無いと。「最近のコンピュータの方が気が利いてる」とは、級友の談。
感情を圧し殺しているわけではない。別段思うところが無いだけだ。望んで機械になっているわけでもない。多分、彼は、このことを知っていて、それでも私のことをあんな風に言うのだ。意地が悪い。

「人に生まれたのが運の尽き。残念だったねえ」

挑発するような言葉。しかし悪意は感じない。彼が実に楽しそうに笑うからだ。目を細め、ほんの僅かに眉まで下げて、私のことを見るからだ。
勝手に現れて、好きだと言って、楽しそうに、一方的に言葉を並べてはすぐに居なくなる。それこそ彼は、ただ私を通り過ぎる存在であるはずなのに。彼が投じる言葉のひとつひとつが、私の心に波紋を作る。投げ込まれた言葉が、奥底で泥をかぶっていた感情を舞わせる。


彼は。こんなにも我が儘に、私の心を呼び覚ましてみせるのだ。


「ああ、君の感情が見られるテレビでもあればいいのになあ。面白そうなのに」
「面白がるのは、先輩だけでしょう」
「充分じゃないか」


――きっと最初は白黒で、でもだんだん彩りが増えてさ、最後はカラーになるんだろう?

見透かしたように隣で言う。感情が舞う。
くすぐったいような初めての気持ちを感じながら、彼を見て、また目を逸らした。

「…今すぐにでも、カラーにしてあげますよ」


そして。この澄ました顔が驚きの色に染まるその時を、少しだけ楽しみに思うのだ。

――機械は今から、「人」を思い出す。










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