企画 | ナノ


「……つかまえた、なまえ」

端整な顔が微笑んだ。
自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる。床にへたり込んだまま、なまえは喘ぐように息をした。

「っ…は……っ」

何も考えられなかった。頭が、体が、今の状況を理解することを拒否した。
―――なん…で…?
家に帰るために、ただいつも通り廊下を歩いていただけだったのに。
音を立てて開いた教室の扉から延びた手に突然引きずり込まれて、そして――訳も分からず見上げた先の人物を見て息が詰まった。
黒と金。折原臨也と平和島静雄――学園で知らぬ者はいない「先輩」が、そこに居た。
動けないなまえを後ろから抱き竦めて、耳朶に触れるほど近く、静雄が低い声で囁く。

「なまえ…」
「ひ、っ!」

思わず身を竦めたが、静雄の腕は完全になまえの自由を奪っている。痛んだ金髪が視界の端に映った。
クスクスと嬉しそうに、臨也が笑う。赤い瞳が悦びに昏く昏く輝く。

「…ふふ、…やぁっと、つかまえた、俺のなまえ…」
「―ひ……や…っ!」

臨也の手が独立した生物のように頬を撫で、耐えきれずに悲鳴を上げる。何を言っているのか分からなかった。
なまえは二人と、文字通り何の関係も無いのだ。
混乱と恐怖が声を奪う。

「……臨也、」
「あはっ、解ってるよシズちゃん…はいなまえ、お口開けて―」
「っ!? ん、んー…っ!」

無理矢理開かされた口に臨也の指が何かを突っ込んだ。錠剤のようなそれを吐き出す前に、静雄の掌がなまえの唇を塞ぎ込む。
涙を浮かべ首を振ったが掌は外れず、舌の上でじわりと厭な味が広がっていく。

「…ん……ん、んんん…っ!」

――いや…いや…!
零れた涙が静雄の手を濡らした。
ひくひくと痙攣する指を臨也が絡め捕って、甘い声を掛ける。

「はい、ちゃんと全部溶かしてねー…ああ、やっとなまえを愛せる!」
「…っ!ん、んくっ、ん…っ」
「…ずっと、欲しかったんだ…なまえ…」

顎を持ち上げられて思わずこくりと喉が動いてしまう。唾液が滑っていく感覚に身震いした。首筋にどちらのものか分からない唇が触れて、ちゅ、と肌を吸われる。体が少しずつ熱くなっていく。

――いや……あ…っ

「っ…ん…――っ…!」
「あははッ、安心して?いっぱい愛してあげるよ!」

びくびくと体が跳ねた。自由は奪われたままで、なまえはただ薬を飲み下すことしか許されず――









「俺たち、ずぅっとなまえのことが欲しくて欲しくて狂いそうだったんだよ」
「や、あ…ッ!ひあぁぅっ!」
「…は…なまえ、なまえ…っ」

卑猥な水音が響き渡る。抱え込まれたまま、耳にかかる熱い吐息にふるりと体を震わせて、なまえははくはくと呼吸にならない呼吸を繰り返した。熱い、あつ、い。

「やっ……あ、あっ!いやあっ!!」
「…あま…」

痺れるほどの刺激に喉が鳴った。うなじに緩く噛み付いた静雄はうっとりと呟くと、なまえを抱く力を強める。突き上げる静雄の熱に何もかも手放しそうになる。
頬を伝う涙の感触も、抱き締められた体も、衣服が肌に擦れることすら快感と錯覚して、頭の芯が焼き切れてしまいそうな快楽が怖くて泣いた。
目の前に膝をついた臨也が、愛しそうになまえの頬を包む。

「ふぇッ、や、やあぁっ、…とけちゃ…とけちゃう……っ!」
「ッ…ほんと、すっごく可愛いよ…シズちゃん、壊しちゃだめだからね」
「うるせぇ、よっ……誰が、壊すか」
「きゃうッ!!……っぁ…ひあぅ…っ」
「…愛してる、なまえ…」

告げられる歪んだ愛の言葉。直接耳に吹き込むように囁かれて、なまえはまたびくりと体を震わせる。

「ふあ…あ…っや、いやっやあッ!おりはら…せんぱ、ぁ…っ」
「………!!っ、あは、名前…呼ばれただけで、イっちゃいそ…」
「…ざけんな、臨也…!…ん、なまえ、俺も…」
「ぁ…!ひく、たすけ、て…へ、わじま…せん、ぱ…!きゃあっ!!」
「……っ!」

静雄が小さく息をつめる。押し込まれた熱が奥を抉ってなまえは一層高く鳴いた。
臨也が肩口に唇を寄せる。ちくりと刺すような傷みと共に、太ももに猛ったものが擦りつけられて濡れた音を立てた。

「ひっ!?ふ、え…ッ…あつい…っ!」
「ん、っ…きもち……ね、なまえ、こんな化け物よりさ、俺が良いよね…っ?」
「…臨也なんかより、っ俺、だよな…?」
「っ、ぃ、やっ…もぉいやあああ…っ!ひぁぁぁぁぁっ!!」
「―――…ッ」

熱が弾ける。波打つ体にぱたぱたと白濁が散り、なまえを白く汚す。崩れ落ちそうになるなまえをもう一度抱き直して、二人は嬉しそうに嬉しそうに、甘く。


「…愛してる」




(きっと、もう逃げられない)








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