企画 | ナノ


「か、帰って…!」
「カタイこと言わないでよなまえさん!」
「愛」
「だめ、だめなの!」

ベッドの隅で小さく叫んだ。追い詰めるように近寄った舞流は屈託のない笑顔を浮かべる。

「へへー。でも、入れてくれたのはなまえさんだよ!そんなに、イザ兄に怒られるの嫌なの?」
「ぅ……」

――確かに、入れたのは私だけど――でも、それはドアの前で二人が騒ぎ立てたからで…!
泣きそうになる。仕方なくとはいえ、扉を開けてしまった自分を後悔しているのだ。

なまえの恋人、折原臨也には妹がいる。目の前にいる九瑠璃、舞流の双子だ。臨也はなまえに、二人と関わらないように、と言った。何故かは分からないが。
しかし、どこから聞いたのか、二人の方からなまえに近づいて来たのだ。そして――兄の恋人であるなまえを、ひどく気に入ってしまった。以来こうして、度重なる来訪に困っているのだった。

にんまり、チェシャ猫のように笑って、舞流は言う。

「んふふ、なまえさん、かーわいい!」
「え、ゃっ…ひゃあぁっ!?」

抱き着いてきた舞流に胸を揉まれて、なまえは悲鳴を上げた。
恥ずかしさとくすぐったさで逃げようとするが、舞流の力に敵わない。出遅れた九瑠璃がむっとした顔で、横からくっついてくる。

「…狡」
「あは、早い者勝ちだよ!あ、なまえさん結構おっきいねえ」
「ひあッ、ゃ、やだやだっ!は……はなして…っ!」

舌なめずりする舞流の手付きはひどくいやらしくて、びくびくと脇腹が震える。声を出すのも恥ずかしくて涙が浮かんだ。
――だめ、…これ以上は、だめぇ…っ!
ぎゅうっと目を閉じた瞬間、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。


「――随分と楽しそうじゃない」

「あ、イザ兄ー」
「……ふえ…え…?」

涙で滲む視界に佇む黒。
攻撃的な笑みを浮かべて、折原臨也がそこに立っていた。
ばちり、妹と兄の視線がぶつかる。

「……九瑠璃、舞流。何してる」
「何ってー、なまえさんとナカヨクしてるんだよ!」
「好…」
「………帰れ。早く」
「…むー。しょうがないか…、じゃあね!なまえさん!」
「……別」

唇を尖らせた舞流が呟くと、なまえに絡み付いていた手が離れる。
笑いながら部屋を去る二人を一瞥して、臨也はへたり込んだままのなまえに口を開いた。

「………なまえ?」
「あ…」
「俺、言ったよねえ。あいつらには関わるなってさ」
「ち…ちが…!」

ようやく事態を呑み込んで、真っ青になりながら首を振る。瞬間、毒のような赤い目に射られて身動きが出来なくなった。


「俺以外にあんなことされるなんて…ちょっと――教育が必要だ。ねえ?」


残酷に笑う恋人の姿に、二回目の悲鳴を上げた。








「ふえ、っ!ごめん、なさっ…ごめんなさぃ…っ!やあぁぁあっ!」
「はっ…そんなんじゃ、全然足りないよっ…」
「ひうッ!もぉ、ゃ、らっ…ぁ…あああぁ…っ!」

容赦ない行為に何度目かも分からない絶頂を迎える。抵抗する力も無いなまえは、ただ切なく泣くことしか出来ない。
呼吸も荒いなまえの耳元で臨也が囁く。

「…まだ、足りないよ。なまえが一体誰のモノか、ちゃんと教えてあげないと、ね…ッ」
「ふぇ…え…ひく、ごめんなさい、ごめんなさい…ッ、も、いや、やらあっ」

永遠に続くような快楽が怖くて、ぼろぼろ泣きながらただ謝った。これ以上はきっとおかしくなってしまう。
震える腕を必死に動かして目の前の体に抱きついた。臨也の動きが止まる。

「……なまえ?」
「ひっ…ごめんなさいっ…も、もう、あんなこと…されない、からぁ…!い…いざやさんじゃなきゃ、やだっ…」
「…………ッ」

うまくまとまらない言葉。赤い瞳が僅かに揺れる。
臨也に嫌われてしまったようで悲しかった。誰にでもあんなことをさせるつもりなんて、全く無い。
自分が誰のモノかなんて、なまえにとって答えはひとつなのだ。

「んっ…ひっく、いざやさん、好き、すきっ……き、嫌いに…ならないで…ごめんなさぃ…っ!」
「……は、ほんと…勘弁してよね…」
「ぅえ…?」

臨也が呟く。ばつの悪そうな顔で、なまえの涙を優しく拭う。

「……様子を見に来たら、あんなことされてるし…あいつらには、気を付けろって言ったのにさ」
「…あぅ…」
「…だから…少し、焦った。ごめん、やり過ぎた…嫌いになんて、ならないよ」
「……ほんと…に…?」
「うん」

ちゅ、とキスが降ってくる。嫌われていないことに安心していると、臨也はにっこり笑って言った。

「はい、仲直りもしたことだし、続きね」
「きゃぅッ!?ひ、あっ!やあぁ…っ!」
「泣いたって、だあめ。足りないって言っただろ」

さっきの謝罪はどこに消えたのか、意地の悪い顔で臨也が告げる。
なまえの抗議も泣き声も、まとめてキスに消された。










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