企画 | ナノ


「ほ、ほんとに?しずお、今日お休み?」

「おう」

「…!」

なまえの顔がぱあっと輝いた。そわそわ動く視線を隠すように俯いて――でも、嬉しそうに緩んだ口元は隠せていない。
思えば、なまえと過ごせる休日は久しぶりだ。
そっと髪を撫でてやる。

「……悪いな。寂しかったろ」

「えへへー…」

首を傾げてなまえが笑う。こうやって、撫でてもらうのが好きなんだそうだ。撫でている間は何も言わないが、喜んでいるのがよく分かる。パタパタ揺れる尻尾が見えるくらいに。

「あー……どっか、行くか?」

「んーん、いいー」

ふにゃん、というか、ふわふわ、というか。なまえの笑顔にはそんな擬態語が合う。溶けそうな、幸せの笑み。

「でも、せっかくの休みだろ。どっか…」

「…あ、あのね……今日、は」

「…?」

顔を赤くして言い淀む姿に、今度は俺が首を傾げる。他にしたいことでもあるのだろうか。
先を促そうと口を開いた瞬間、なまえのハッキリした声が耳に飛び込んできた。

「きょ…今日はね、私がしずおを独り占めするの!だ、だから、どこにも…」

「ッ!」

「…だめ?」

「〜〜〜……い、や」

だめなわけ無ぇだろっていうかなんだ今の。なんだ今の!
柄にもなく頬が熱を持つ。目線を逸らして口元を押さえて、ああ俺すげえカッコ悪いな。
くそ、可愛い。

「―――……じゃあ、何かして欲しいこと、あるか?」

「え…あ…」

わざとらしい咳払いで誤魔化す。誤魔化せてねえ?うるせえなこれが限界なんだよ。
一緒にいたいなんて言われた以上、俺には期待に応える義務がある。

「…えーと…え、と…」

何がしてやれるだろう。料理とか…か?
妙に緊張してごくりと喉が鳴る。
視線をさ迷わせていたなまえが、そろそろと口を開いた。


「…だっこ、して?」


殺す気か。



(えへへー)
(かわいい…)







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