企画 | ナノ


「…何だこれ」

黒く艶やかな三角形。無造作に置いてあったそれを手に取り呟くと、なまえが眉を下げた。

「あ…、えっと…この間、友達がくれたの」
「……猫…か?」
「そう、猫耳…何かの行事で使ったんだって。それで…なんか、私にくれて…」
「何でだよ…」
「う、うーん…?でも、もう捨てちゃおうかなって思ってたの。使わないから…」
「―――…」

くるり、手の中で猫耳のついたカチューシャを回す。ふわふわした耳は意外と触り心地が良い。無言の俺を不思議そうに見つめるなまえ。不意に沸き上がる、純粋な好奇心。
―――見てえ、な。
徐にカチューシャをかざすと、なまえがぎくりと強張った。

「なあ、付けろよ。これ」
「や、…やだ!いや!」

なまえが慌てて首を振る。そう嫌がられるとどうしても付けさせたくなるんだよな。いい加減、分かった方がいいぜ。
じりじりと後退り始めるなまえを見て、ニイ、と酷薄な笑みが浮かぶ。
――勝ち目なんざ、最初っからねぇんだよ。

「逃げんじゃねえ」
「やだ、や…あっ!」

簡単なことだ。逃げようとするなまえを引き寄せて、耳元で一言、低く低く。

「なまえ。…じっとしてろ」
「ひ!っ…ゃ…」

弱ぇんだよな。耳が。
びくんと震えた細い体。暴れなくなったのを確認してカチューシャを付ける。似合うな、やっぱり。
耳まで真っ赤になったなまえが顔を覆って呟く。

「………ずるい…!」
「ずるくねえ。…尻尾もあれば良かったか」
「し、静雄さんの、ばかっ……ん!」

弱々しい抗議を塞ぐ。俺はどうやら猫耳を甘く見ていたらしい。意外と――いや、結構、クる。
キスをしながら考える。ああ、口実、どうすっかな。まあ何でもいいか、なまえが可愛いのが悪い。男ってのは単純だ。

「…馬鹿で悪いな、なまえ」

どさり。倒れ込む音が遠く聞こえた。





「あー……やっぱ、いいな、これ…」
「やっ!…ん、んっ!」

揺れる耳を見ていると、まるで本当になまえが猫のような気がしてくる。整わない呼吸の合間に涙声でなまえが言う。

「ふえッ…これ…取ってっ…」
「あ…?」
「みみ、もうやだっ…恥ずかしい…!」

潤んだ瞳がますます猫みてえ。涙をためたその目で見つめられて心が揺らいだ。
しかし、こんな時こそ邪な考えとは生まれてくるもので。びくっとなまえが怯えるのが分かった。
…今相当悪い顔してんだな、俺。
「……にゃー、って言えたら取ってやるぜ」
「…!?」
「言わなかったらこのままな。取ってやんねえ」
「っ!や、」

首筋にキスを落とす。腰を押し付ける形になって、なまえの喉が小さく鳴った。俺に取る気が無いことを悟ったのか、覚悟したようにごく、と熱い息を飲む音が聞こえる。

「っ…い…、言う、から……っ」
「ん」
「………っ」

耳まで赤くして、なまえがぎゅうっと目を瞑る。吐息が耳に掛かった。
押さえる俺の手に控えめに指を絡めて、ぽつり。

「…と……取ってください、にゃ…!」
「ッ…」

…クソ、可愛い。
熱が引くどころか上がったのを感じる。本当に単純だな俺。
――後で怒るだろうが、止められそうにねえな。


目の前の猫との遊びは、まだ終わりそうに無い。








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