企画 | ナノ


本に目を落とす門田の横顔。
それを見つめながら、なまえは小さく呟いた。

「……いいなあ…」
「何がだ?」
「え? あ、え、と…」

読書に集中していたかと思っていた門田が、そんな呟きに反応したことに狼狽する。頬をほんのりと赤らめて俯く。

「…門田さんが、いつも、冷静で…羨ましいなあ、って…」
「…ああ」
「………あう」

納得して頷く門田にますます顔が熱くなる。なまえが照れ屋だということは、恋人である門田が一番良く知っていた。
直ぐに顔が赤くなるのが恥ずかしくて、また温度が上がっていく。

「……わ、私、ずっとこれを直したくてっ…どうしたら、恥ずかしがらずにすみますか…!」
「…」

恥ずかしさのあまり眼が潤み出す。門田は暫く無言で考え込むと、ぱたん、と本を閉じて、口を開いた。

「…そうだな。練習するか」
「………へ…?」

訳が分からず、ただこちらに近寄ってくる門田を見る。
読書中と同じ落ち着き払った顔のまま――門田は軽々と、なまえを押し倒した。

「………え?」

驚きのあまり涙が引く。これは、なに…?
事態を本当に理解した数秒後、破裂するのではと思うくらい大きく心臓が跳ねた。

「…な……な、なんでこうなるんですかあ…っ!」
「何でってな…なまえが言い出したんだろ」
「ちが、…こういうのじゃ、ないのに…!」

門田と床の間に挟まれ、逃れることも出来ないまま声を上げる。恥ずかし過ぎて身動きすら出来ないのだ。耳や首筋まで熱を持ち始めるのが分かった。

「恥ずかしがらねえための練習な。まあ…これに慣れりゃ大概のことは平気になるぜ」
「ひ…ゃ…っ!」

唇が耳朶に触れる。ビクリと身体が震えた。口元に手を当てて声を殺そうとすると、門田が声を出さずに笑った。静かに瞳が鋭くなる。

「…簡単に音上げんじゃねえぞ」


―――――


首筋に押し当てられる唇にひくんと喉が鳴る。
恥ずかしさが死因に成り得るとしたら、きっと今すぐ死んでしまうだろう。
唯一声を抑えることの出来た両手は床へと縫い留められてしまい、抗う術は何も無くなってしまった。速くなるばかりの脈拍に気づかれてしまうかもしれない行為に、なまえは悲鳴を上げる。

「ひ、や、…やだ、や…っ」
「……まだ、熱ぃな」
「!! ……ふえっ…」

このままじゃいつまでも終わらねえぞ、これ。
緩く揺さぶられ、囁かれた言葉に泣きそうになる。どうしよう、どうしよう、だって慣れろなんて、そんなの無理、むり…!

顔の熱は引かない、それどころか上がるばかり。どくどくと速まる自分の鼓動を聴きながら、どうしたらいいのか必死に考える。目を合わせるのすら恥ずかしくて、声を出しただけで死んでしまいそうで――

「………か、ど…かどた、さ…っ」
「!」

――それなら。

「………っ、…すき…っ!」

――それなら。普段言わない、言えない、素直な気持ちを口にすれば、もしかしたら。

――許して、もらえる…?


「…っ」

門田が息を呑んだ。予想外の言葉に動揺してしまう。頬に差す赤。
――なんで、本当に照れるべき所で照れねえんだよ!

「……ふ、ぇ…もう、むり…」
「………。これで終わりとか思うなよ、なまえ」
「、ゃ…っかど、ん…っ!」

潤んだ瞳に告げる。
自分の照れが気取られないうちに、食らいつくようなキスをした。



(余裕が無いのは俺の方だなんて、誰が言えるかよ)






20000ヒットリクエスト企画
首さまリクエスト「余裕ぶった門田とちょっと照れ屋な主人公で裏」


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