企画 | ナノ


「さあさあここで帝人にクイズだ。俺が付き合ってる可愛い彼女の名前はなんでしょう! 1.みょうじなまえ、2.みょうじなまえ、3.みょうじなまえ」
「4.妄想」
「おま…」


ぢゅるる、紙パックのジュースを吸い上げる合間に帝人が答えた。何だとこのやろう、全ては俺の妄想だとでも?

「ナンセンス!ナンセンスだ帝人!」
「うるさいよ正臣」
「いいから黙って聞け。なんとなまえがな、俺にお弁当を作ってくれた」
「へえ、みょうじさんが?」

俺には彼女がいる。これは断じて妄想なんかじゃない、オーケー?なまえっていうそりゃもう可愛い女の子な訳で、これは俺が最高にハッピーな男だということの証明になるはずだ。
そして今日。そんななまえが、俺に、お弁当を作ってくれたらしい。

「正直に言えよ?帝人。…羨ましいだろ?羨ましいんだろ?この俺が!今から彼女とイチャイチャランチタイムなこの」
「だからうるさいよ。みょうじさん待たせちゃ駄目だろ、行きなよ。とっとと」
「え…あ……おう…」


――――


屋上には既になまえがいた。
お弁当箱を二つ膝に乗せて、そわそわと落ち着かない。よし、ここはひとつ、不安がっている彼女に彼氏の余裕でも見せてやろうじゃないか。なあ?

「なまえ!」
「ひゃあっ!あ、わ、正臣くん…!」
「ごめんな。待たせた」
「う…ううん!ありがとう、来てくれて」

はにかんだ笑顔が最高に可愛らしい。悪いな帝人、俺はもうお前とは違う世界にいる!一人ハンカチを涙で濡らすがいい。
緊張しているなまえの隣に腰を下ろす。空は俺の心を映したかのような晴れやかさ。

「え、ええとね………これ、なんだ、けど…」
「ああ、ありがと」

そろそろと差し出されるお弁当箱。俯き気味のために僅かしか見えない顔は真っ赤になっていて、「手作りのお弁当を恋人に渡す」という行為が、どれだけ女子にとって重要なイベントなのかが伺える。
こんな状態の彼女に対して「不味い」だなんて言葉を吐ける男はいない。いたとしたら人間じゃない。任せろ、最高の笑顔で返してみせるぜハニー。

綺麗に盛り付けられたおかずから、卵焼きをひとつつまんで、口へ運ぶ。なまえがごく、と息を呑み込んで、不安げに俺を窺う。

「……ど………どう…?」
「…うまい」
「ほ、本当…っ!?」

なまえの顔がぱあっと輝く。
しまった、本当にうまいものを食べたときは笑顔を忘れるのを失念していた。手作りのお弁当と、喜ぶなまえと、なんだか幸せで今すぐいろいろと叫びたい衝動に駈られたが――抑える。何てったって俺は今、「余裕のある彼氏」だからな。

「いや、本当に…うまいよ、これ。ありがとな、すげえ嬉しい」
「…、良かった…!」
「……なまえは食べないのか?腹減っただろ」

未だにお弁当に手をつけないなまえに尋ねる。問われたなまえは、少し照れて笑った。

「あ…正臣くんが、おいしいって言ってくれたから…なんか、嬉しくて、胸がいっぱいで…」


…あ。
ヤバい、キュンときた。



(聞け帝人、俺となまえのラブラブランチタイムを!)
(黙ってよ)





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