企画 | ナノ


「大人しくした方が身のためだと思うけどな」

「絶対、いやっ!」


絶賛反抗中。じりじりと近寄ってくる臨也さんを前に、わたし。だって、手が、手がなんかいやらしいもん!こっちは耳とか尻尾とかろくでもない目にあってるっていうのに、これ以上好き勝手になんかさせないんだから!
わたしの意志に反応して耳と尻尾の毛が逆立つ。今更ながら、良くできてるなあ、なんて。


「ふうん。さっきはあんな鳴き声あげたくせに、もう主人に反抗?」

「………!!ばかあっ!」


意地悪く口の端を持ち上げた臨也さんの言葉に、一気に顔が熱くなる。同時にさっきのことが思い出されて、恥ずかしくて悔しくてつい叫ぶ。
伸びてきた手が、耳を掴んだ。


「あ…やっ!」

「本当に学習しないねなまえ。言ったでしょ?俺が、ご主人様。何を聞いてたのかなこの耳は」

「ひゃ、ぅ…!」


ぐにぐに揉まれて耳が震える。掴んでいる臨也さんはとても楽しそう。ご主人様って、勝手に言い出したのはそっちだよ!全くもって、臨也さんが笑っている時はろくなことが起きない。
手の動きが止まる。臨也さんがつまらなそうに呟いた。


「…まあ、なまえがどうしても反抗したいって言うんなら、仕方ないなあ。…また恥ずかしく鳴き声をあげることになるだろうけどね」

「!!…言うこと、聞く!聞きます…!(し、尻尾はもうやだ…!)」

「それじゃ、ちゃんとご主人様って呼ぶこと。分かった?」

「………はい、ご主人、さま…」

「はい、良し。おいで、なまえ」


満足そうな笑顔。たった一言、されど一言。これ、すごく恥ずかしい…!あんな醜態晒すくらいなら「ご主人様」くらい、と思ったのに。結果は五十歩百歩なんて、報われない!
心中で散々文句は言っているけど、おいでと言われて足は素直に臨也さんのところへ向かう。すとん。誘導された膝の間。


「いやあ、ほんと良く似合ってる」

「嬉しくないもん…!」

「あはは」

「……こういうところがなきゃ、もっとかっこいいのになあ…」

「…何?なんか言った?」


ぱたぱた嬉しそうに揺れる尻尾を見ながら呟く。後ろでご機嫌のご主人様には、聞こえなかったご様子。今は楽しそうだけど、きっとその内飽きるんだろうな。
だって、所詮は。




(振り回される身にもなって欲しいよ!)






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