企画 | ナノ


黒く黒く。胸が焼かれる。


「…ルフィ、くん…?」



夕暮れ血のいろ。教室が赤く染まる。校庭の生徒の声が遠い。
それに消されるくらい小さくなまえが呟くのを、ルフィは黙って聞いていた。壁に押さえつけたなまえの体が震えているのが分かる。


「……は、はなし、て?」
「嫌だ」


びくっとなまえが怯えた。
いつも明るく笑っている彼が、こんな低い声を出すのを聞いたことが無かった。恐る恐る口を開く。

「る、ルフィくん…怒ってるの…?」
「…ああ。怒ってる」
「…………!!」


息を呑むなまえに、昼間の光景がフラッシュバックした。楽しそうに楽しそうに、サンジに笑った、あの、笑顔。
見た瞬間全身の血が騒いだ、その時。ルフィは確かに聞いた。耳元で誰かが笑いながら囁いたのを。

―――ほらな。だから言ったじゃねえか。見てるだけじゃ、なまえは逃げるぞ?


今なら分かる。あれは――俺だ。

ジリジリと胸を焼く、この感情が生まれたのはいつだっただろう。なまえに惹かれ、焦がれて。
見ているだけで良いと思っていた。でも駄目だ。これでは、なまえは逃げてしまう。

黒く変質した恋を宿して、ルフィはゆっくりと笑った。
ぞわり、と。なまえの背筋が凍る。


「好きだ、なまえ」
「………ぁ…」
「ずっと、ずっと、好きだった」
「い…や、いや…!」
「…なまえ、なまえ、なまえ…」


かたかた震える体を抱き締める。絶対、誰にも渡さない。俺の、俺だけの。
なまえの瞳から涙が落ちた。ああ、可愛い。可愛い。可愛い。
満足そうに「ルフィ」が囁く。

――これで、逃げない。



日が落ちていく。
真っ赤な教室、なまえの瞼が、静かに降りた。









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