かれかの! | ナノ



「サンジくん」
「……へ?あっ?俺か!」


慌てて立ち上がる。なまえちゃんに話し掛けられるのは初めてで、思わず反応が遅れてしまった。俺ってやつはなんて失礼を。
なまえちゃんが口を開く。

「……折り入って、頼みがあるんだ」
「お、おう…」

ごくり。真剣な顔つきに喉が鳴った。
頼み?あのなまえちゃんが、俺に?もしかすると俺は途轍もなく重大な頼まれ事をされるんじゃあなかろうか。いや、しかしレディの頼みを無下には扱えねェな…。

「……頼みって…何だい?」
「…………その…」
「うん?」
「りょっ………料理を、教えて、くれないだろうか」
「……料理」
「…い、いや…料理と言うか」

卵焼き、なんだ。

ほんの少しだけ、なまえちゃんの頬が赤くなる。照れてるところなんて初めて見たな。
窓際の席をちらりと伺う。昼休みはあの席で、ルフィと仲良くご飯を食べるなまえちゃんを見ることが出来る。その時のルフィの嬉しそうな顔と言ったらもう、それはもう。

「…どうしてだい?」
「…ルフィが、…卵焼きが好きだと言ったんだ。卵焼きは作れるんだが…やっぱり、もう少し上手な方が、良いかと思って…」
「なるほど」

可愛いなァ。口元が緩む。ルフィ、お前は本当に幸せな奴だな。
そういえば、なまえちゃんは最近、少し変わったな。よく笑うし、照れたり、表情が増えてきたというか。
昼休み、ご飯の時。嬉しそうな顔をしているのは、ルフィだけじゃないんだ。

いやァ、二人して実に初々しい。

「…その気持ちがありゃ、充分さ」
「?」
「俺が教えなくたって、もうルフィは喜んでるよ。…なまえちゃん、アイツ、美味そうに食うだろ?」
「あ、ああ…」
「ルフィは、なまえちゃんの味が好きなんだ。もう何もいらないと思うぜ?」
「……!」
「手が掛かると思うが…いい奴なんだ。よろしく頼むよ、なまえちゃん」
「……。…ルフィは、人気者だな」

なまえちゃんがはにかんで笑う。ルフィと付き合う前にはなかった顔。

「……ありがとう。サンジくん」


柄じゃねェが。
たまにはいいな、こういうのも。


たのしみ
(なまえ!今日の卵焼き、すっげェうめェなー!)
(そ、そうか…!)


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テーマ「人外ファンタジー」
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