かれかの! | ナノ
ルフィの家に呼ばれた。
「ううー……」
「…が、頑張れ」
理由は宿題。連休に入ったので、いつもより多目に出されたのだ。
絶対に一人ではさばききれないと頼まれて、今回家で勉強ということになったのだが。
積み上げられた課題は、贔屓目に見てもあまり減っていない。
答えを教えては駄目だ、と堅く決めているなまえだったが、頭を抱えるルフィを見ているとどうにもかわいそうになってしまう。
この瞬間、二人は一緒になってくじけそうになっているのだった。
「むー……うし!気分転換だ!」
「ぅわっ?」
「なまえ!ジュース飲むぞ!」
「あ、え…ああ」
すっくと立ち上がり、「ちょっと待ってろ!」と笑いながら、ルフィは部屋を出ていった。階段を降りる軽快な音。
ほ、と息をつく。危ない、あとちょっとで折れるところだった。駄目だ、ルフィの為にならないぞ、なまえ…!
「……?」
階段を登る音が聞こえる。ジュースを取りに行ったのだから、戻って来るのも不思議では無いけれど。
――それにしては、足音が重いような――
「る、」
「ルフィ!お前また俺のシャツ勝手に」
「………」
「………間違えました」
「…どうも」
ぱたん。静寂。
「いやいやいやここ俺ん家だから!」
「…お邪魔してます、お兄さん」
「義兄さん!?」
どうしよう。
入って来た青年と会話を交わしつつ、なまえは困っていた。ルフィが兄と二人暮らしだと言っていたから、きっとそうだろうと思ったのだが違ったのか。ていうか話がすれ違った気がする。今誤解された気がする。
こほん、と青年が咳をした。なまえの前に座り、頭を下げる。
「あー…もしかして、なまえちゃんか?弟が、世話になってます。兄のエースです」
「いえ…こちらこそ、ルフィくんにお世話になっています、彼女のなまえです」
深々と礼。よし、これで失礼は無い。
頭を上げると、エースが目を丸くしていた。眉が下がり、肩が震え出す。
「……く、あは…あっはっはっはっは!」
「!? っ?」
「か、かの…彼女です、って!男前だなあおい!」
床をばしばし叩いて笑いだした。今度はなまえが目を丸くする。その様子を見て、更にエースは笑った。
部屋の外でばたばた慌ただしい足音が聞こえ、今度こそルフィが姿を現す。
「何やってんだよエース!」
「い、いや、お前、幸せな奴だなあ!あっはっはっは!」
「痛えっ!何だよー!」
ゲラゲラ笑いながら、エースはルフィの肩を叩いた。それから、未だに首を傾げるなまえの方を向いて、言う。
「なまえ!ルフィをよろしくな!」
「! …はい」
「? ? 何の話だ?」
「まあな、弟には幸せになって欲しいなって、そういう話だよ」
ぐりぐりルフィの頭を撫でて、エースはにかっと笑った。良くわからないまま、つられてルフィもくすぐったそうに笑う。
結局勉強ははかどらなかったが、その日から、なまえはエースの大のお気に入りとなったのだった。
なかよし!
((なまえ!勉強教えてくれ!))
(…はあ)