かれかの! | ナノ
「なまえー!メシ食おう!」
正月かと疑いたくなるような重箱を抱えたルフィがそう言ってきたので、なまえはやはり面食らった。なんだか驚いてばかりだ。
昼休みともなれば、生徒たちは思い思いの場所で昼食をとろうと移動するので教室は少し寂しくなる。
重箱だけでなく、机まで一緒になまえのところへ持って来て、ルフィは満足そうに笑ってみせた。
「へへ、いいだろ!」
「…そんなに食べるのか?凄いな」
「おう!」
にこにこ笑いながら包みを開ける。クリスマスプレゼントを喜ぶ子どもみたいで、小さく微笑む。と、ルフィの手が止まった。
「?どうした?」
「……ん、何でもねェ!よし!メシだ!」
いただきます!と手を合わせる。
ルフィの頬がほんのり赤いのを不思議に思いながら、なまえは自分の弁当箱を開けた。目の前の重箱と比べるとえらく小さく見える。なんだこのスケール感。
そういえば、となまえは思う。ルフィはいつも重箱なのだろうか。随分立派なものだが。
「…いつもそれなのか?」
「ん?違うぞ!サンジが持たしてくれたんだ!」
「サンジくん?」
「サンジはすげーんだ!何でも作れんだぞ!そんですっげえうめェ」
「……そうか」
まるで自分のことのように嬉しそうに話すルフィ。あの時まであまり交流が無かったが、どうやらサンジという少年は非常に紳士的な性格らしい。ルフィを蹴りつけて颯爽と去っていった姿を思い出す。
「なまえのは?手作りか?」
「ん、そうだな。手作りだ」
「…卵焼きも?」
「(何故卵焼き)……ああ」
「へえええええ…」
「……………」
「……………」
「……………食べるか?」
「ほんとかっ!?」
目が輝く。ししっ、と笑って、ルフィは口を開けた。
――これは、もしかして、食わせろと?
なまえは一瞬の後、卵焼きを大きく開いた口の中に入れた。俗に言う、「あーん」。
――いや、でも、どちらかというと餌付けみたいだったような、
幸せそうにルフィが卵焼きを食べている間、なまえはそれでもしっかり熱くなった頬を押さえていた。
「うっめェー!」
「…そ…そうか」
「俺、甘い卵焼き、好きだー…」
「…じゃあ、また、作って来る…」
「……!ししっ、俺、幸せだ!」
「…それは良かった」
チャイムの鳴る中、二人で赤くなった顔を見合わせて笑った。
しあわせ
「「あーん」だと…!?やるなルフィ…!」
「覗いてんじゃねえよクソコック」
「黙れよクソマリモ」