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愛してる、愛してる、愛してる!

なまえを愛してる。
どこをって?決まってるじゃないか、全部だよ。髪も声も瞳も唇も体も――勿論心もね。

なまえが俺だけに見せてくれる表情、他の奴等にも見せてやりたいよ――だけど駄目だ。
ああ、駄目、駄目、駄目だ!
…考えただけで虫酸が走る。なまえが俺以外の人間の視線を受けるなんて本来あっちゃいけないんだ。本当なら今すぐにでも拐って、誰も居ない部屋に閉じ込めたいくらいだけど、まあ、まだ俺はなまえにとって「優しい恋人」だから……我慢、かな。仕方ない。

…そう。まだ早い。まだ…なまえに、最高に俺を愛してもらうには…足りないんだよ。準備がね。

とにかく、なまえには俺だけを見ていて欲しいんだ。俺のことだけ考えて――他のことなんて、感じる暇も無い程に。俺は、なまえを愛してる。愛してる相手に、自分のことを愛して欲しいと願うのは当然だろ?なあ?
だから、だからだからだから――なまえに、俺を刻み付けるんだ。深く、強く、絶対に消えないように!

ク…は、はははッ…あはははは!!可愛かったなあ、なまえ!悲しくて悲しくて堪らないって顔してさ!俺に、泣きながら縋りついてさあ!
クハっ…楽しみだなあ、楽しみだなあ!なまえから根こそぎ全部奪ったのが「優しい」俺だって知ったら、知ったら――なまえは、絶対に俺を最高に愛してくれる!

―――…「憎悪」は、最高の愛の形だよ。ただ愛が煮詰まって固まって濃くなって、強くなっただけさ。足りないんだ。足りないんだよ、もっと強く…俺は、なまえに愛して欲しいんだ。
考えてもみなよ!ねえ!なまえが俺を憎んで憎んで憎んで……俺以外には目もくれずに!誰がどう考えたって愛じゃないか!楽しみだなあ、楽しみだなあ、楽しみだなあ…もうすぐ、なまえは俺しか見えなくなる。俺のことだけ考えてくれる。もっと強く、深く、俺を愛してくれる!嬉しいなあ!あはははは!

ああ――愛してる、愛してる、愛してる!







「……どこの誰だか分からないけれど、可哀想に」

淡々と仕事をこなしつつ、助手の女は呟く。

部屋の中、歪んだ愛を語った男の笑い声が、カラカラと、カラカラと。




(愛して欲しいだけなんだよ!)




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