小説 | ナノ
※携帯電話擬人化
「い、臨也さん、お電話です…」
「分かった。こっち来て」
おずおずと近付いてくる黒髪の少女。にっこり笑って、臨也は自分の膝の間を指差す。
少女が泣きそうな顔をした。
「ど…どうしても、そこじゃないとだめ…?」
「駄目。ほら早くしてよなまえ、電話切れちゃうでしょ」
「………っ」
そろりそろり。ソファに腰掛ける臨也に少女、なまえが近付いて、向かい合うように膝の間へ収まる。ぎゅっと目を閉じて、唇を臨也の耳へ寄せた。なまえから抱きつくような格好。
通話時はこうしろ、と命じたのは臨也だ。
長い通話が終わると、なまえが小さく息を吐く。離れようと身動ぎした瞬間、臨也の手がなまえを捕らえた。そのまま横抱きの状態に抱え直す。
「ひゃっ!え、な、なに…」
「ねえなまえ。君はさ、誰のもの?」
「……い…臨也さん、です…」
「そうだよねえ?持ち主の俺の操作には、ちゃんと従うべきじゃない?」
「…っ、ご…ごめんなさい…!」
「分かれば良いよ」
赤の瞳に射られてなまえが怯える。なまえは賢いから、今の言葉の裏の意味くらい解るだろう。賢い奴をいじめるのは楽しい。
―そういえば。俺の趣味が「携帯電話を踏み潰すこと」だった時もあったっけ。
そう懐かしくない趣味を思い出す。臨也は笑って、携帯を閉じた。ぱちん。
さて、新しい玩具でどうやって遊ぼうかな。