小説 | ナノ


躾は大事だ。
良いことをしたら褒めてあげなきゃ駄目。同じように、悪いことをしたら叱ってあげないと駄目。調子に乗られたらオシマイ。
どっちが主人でどっちがペットか。きちんと教えてあげるのも教育のひとつでしょ?


「臨也が私の分までコーヒー出してくれるなんて、珍しい」
「前にもあったよ、忘れるなんて酷いね」
「そうだっけ」

すっと目を細める。最近、といっても前からだったけど、なまえの俺に対する扱いが波江に似てきている。つまりぞんざいだ。生意気!人を駒にできる俺が、あろうことかなまえに駒にされている感じが否めないのだ。
というわけで、お仕置きを実施することにした。まあ勿論そういう意味で。出したコーヒーには薬が入っている。新羅から譲り受けたもの。加減が分からないから多く入れちゃったけどどうだろう、平気かな。

「臨也。お砂糖欲しい」
「自分で取ってきなよ」
「いや」
「…………。しょうがないなあ」

取りにいってしまう辺り俺も優しい。砂糖を入れるのはなまえだけだ。感謝してよ、こんなのなまえだけだからね。今からお仕置きするけどさ!

「はい」
「わあい。ありがとう」
「棒読みすぎじゃないのそれ」

砂糖を入れた手が、今度はくるくるスプーンを回す。かち、とスプーンが置かれて、カップが口元へ。ああ、俺も飲まなきゃ。一応。

「……」
「………何?飲まないの?」
「飲むけど… ?」

なまえが首を傾げて、口を付ける。こくり。あ、飲んだ。
薬、いつ効くんだっけ。速かったかな。

「おいしい」
「そう、良かった。変な味とかしなかったでしょ?」
「…………臨也。一応聞くんだけど、なにか入れたりした?」
「したよ」
「…ああ……」

なまえが小さく頷く。あれ、リアクション薄いなあ。残念。

「なまえってば最近生意気だから。ちょっと、薬でも盛ってやろうかと」
「…それは、どういうもの?」
「俗に言う媚薬ってやつかな。量多いかもしれないけど、死ぬことは無いから平気だよ?」
「そう。安心した」
「うん、安心して。まあ、死ぬことは無いけど…そうだなあ、なまえが泣いて謝るくらいに は―――――あ、れ ?」


がくんと膝から力が抜ける。座り込んだ同時にじわりと拡がる熱。
…え、え、まさか、


「…………っあ、う…!」
「…お仕置き、ね」

くす、となまえが笑った。酷薄な笑み。

「…なん、で…」
「種明かしすると、カップ入れ替えただけなんだけど…良かった、一応入れ替えといて。変な味、しなかったでしょ?」
「そん…な…!ひ、やっあ…!?」

全身が快感に震えて声が出ない。じゃあ。じゃあ、全部裏目に出ることに――


「さて。辛そうだけど、死にはしないから平気よね?ああ、でも…」
「あ、ぁっ…」
「泣いて、謝るくらい………だったっけ、ねえ?」
「い………っやらああぁああああぁ!」

















「…それで喉も嗄れて、動けないって言うの?馬鹿じゃないの貴方」
「…う、っるさい…」


その女、
主人につき
「も、っ…さいあく!」
「言い付けるわよ」
「…ひいっ」


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