小説 | ナノ
「ね、えっちな本、無いの?」
「…ごふっ」
「わあ汚い!」
プリンが気道に入った。汚いじゃねえよ、俺が今何故噎せたのか分かってんのかなまえ?それにこのプリンいつものより少し高いんだぞ?プリンが可哀想だろ?
「………何だと?」
「あのね、本が読みたいの」
こて、と小首を傾げる。んなことしたって無いモンは無いぞ。
なまえは読書が好きだ。本が好きというよりは読書が好きと言った方が正しいかもしれない。寧ろ読書に取りつかれている。
どうしたって何か読まないと落ち着かないんだそうだ。世の中につまらない本は無い、らしい。
「しずおのお家には本があんまり無いから…じゃあ、男のひとだし、せめてえっちな本くらいはあるかなと思って」
「あー…取扱説明書は?」
「携帯電話のしか無かったの…」
読んだのかよ。
「ね、無いの…?トムさんとかから貰ってない?」
「お前はトムさんを何だと思ってんだ!…ねえよ」
捨てておいて良かった。
「ベッドの下とか見たのに無いんだもん…」
「やめてくれ」
「…つまんないよう…お金も無いから買いに行けないし…」
なまえの瞳がうるうるし出す。頑張れ…負けるな俺!いや負けてどうなる話でもない。ただ、甘やかすのは危険というか、
「…しずお…」
「…………プリン、食べたら本屋連れていってやる」
「ほ、ほんとに…!?わあい!ありがとう!」
負けた。
高いプリンとか甘やかすのは危険とか、いろいろ言いたかったことがあるのに俺って奴は。
―まあ、喜ぶなまえを見るのも悪くねえ。
詰まる所甘々
(しずお、好きー!)
(……おう)