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「精が出るな。千地」
「あ?…なんだ、なまえか」

トレーニングルームに入って来たのはなまえだった。薄く笑みを浮かべて近寄ってくる。

「何だ…お前もトレーニングか?」
「いや。さっき新人の子が探していたぞ、あの…ガンタくん、だったか」
「そうか」

入り口を指差す細ぇ指。
指だけじゃない、身体だって細くて薄い。ガンタといい勝負だ。力は強いが。
なまえが低く笑う。この声が、なんとなく、好きだ。落ち着く。


――? 待て、男同士で何言ってんだ俺は!そういうことはチョップリンにでも任せりゃあいい!


「どうした、千地? 行かないのか」
「あーいや、何でもねえ…行くか」
「…?」

そうだ。俺は別に、男が好きな訳じゃねえ。良し。
言い聞かせながらトレーニングルームを出ると、廊下の向こうからガンタが走って来た。……クソ女も一緒かよ!

「あ、千地さん…!良かった〜…なまえさん、ありがとうございます!」
「どういたしまして、ガンタくん」
「よぉ筋肉バカ。なまえに手ェ出してねェだろうな?」
「誰が出すかクソ女あ!ってやめろ!近寄るんじゃねえ!」
「あはは…でも千地さん、なまえさんは平気なんですね」
「…………あ?」

思わず動きが止まる。平気?なまえが?


「ガンタお前…何言ってんだ?」
「え?…あれ?千地さん、まさか」
「ああ…やっぱそうか。筋肉バカ、イイコト教えてやるよ。なまえは女だ」
「……は?……ぶっ!?」


理解する前に鼻血が出た。ニマ、とクソ女が笑う。出血の中、混乱する頭で考える。なまえが、女、だと?じゃあ俺が、今までにしたことは―

「…千地お前…気付いて無かったのか?今まで?」
「……っなまえてめえ!先に言えよ!それじゃ俺はっ、「肩組んだりしてたよなァ」…っぶはっ!」
「み、水名月…」
「私が男か女か言う前に話し掛けてきたのは千地だぞ? なんだ…勘違いか、私はてっきり」


「てっきり、お前の特別なんだと思っていたんだがな」


しれっと言い放つなまえを前に、千地清正は昏倒した。




反則!
(おい、千地?)
(…なまえさん、すごい…)


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