小説 | ナノ
※学生
教室から出ると、顔を見るのも嫌な野郎つまりトラファルガーがいた。有難いことに視線は俺でなく後輩の女子に向けられている。
「なまえ!好きだ!結婚してくれ!」
「……チッ」
思い切り不快そうに舌打ちしたのは、入学式でこの野郎に見初められてしまった世にも哀れな女だった。名前はみょうじなまえ。
「よぉユースタス屋。丁度良かった仲人してくれ」
「何が丁度良いのかサッパリ分からねえよ」
「チッ」
二度目の舌打ち。なまえは凍り付くような視線でトラファルガーを見ている。心から同情する。
「いい加減にしてください。私は貴方が嫌いです」
「(コイツはっきり言うな)」
「ああ、これがツンデレってやつか?だったらこっち来いよなまえ、存分にデレさせてやる」
「お前気持ち悪いぞ」
信じられないポジティブシンキングでトラファルガーがなまえの肩に手を置いた瞬間、奴は地に臥してなまえに横四方固めをきめられていた。何だこの女。
「な、なまえ…!人前でこんな…お前大胆だな!」
「大丈夫です。万が一のことがあってもキッド先輩が綺麗に埋めてくれますから」
「俺を巻き込むな!」
「なまえ、抱擁は嬉しいが些か苦しい。これが愛の力か」
「お前それ、早く外さないと死ぬんじゃねえのか」
トラファルガーが嬉しそうに「ギブ」と言ったのでなまえは立ち上がった。馬鹿野郎はブツブツと結婚式について呟いていた。病院行けよ。
「もう付きまとわないで下さいね」
「ああ、その代わり一生側にいてやるよ」
「死ねば良いのに。ていうか先輩、この間私の読んでた本すり替えたでしょう。官能小説に」
「なまえ、警察行け」
「俺はああいうプレイが好きなんだがお前はどうかと思って」
「燃やしたんで読んでません」
どうやら俺はトラファルガーを侮っていたらしい。コイツ最早犯罪者じゃねーか。野放しにしちゃいけない感じの。
「先輩のせいで休み時間が潰れましたよ。それじゃ、キッド先輩」
「おう。警察行けよ」
「そんなところより一緒に市役所に」
「触るな変質者!」
懲りずに手を伸ばしたトラファルガーを思い切り殴ってなまえは去っていった。
このやり取りに慣れてきた俺も、相当ヤバいかもしれない。
キッド先輩の憂鬱
「フフ、そうかこういうのが好きか」
「今世紀最高に気持ち悪い笑顔だな」