小説 | ナノ




「わたしね、サンジくんの手、好きだよ」


隣に座ったなまえちゃんが不意にそんなことを呟いた。俺はといえば、なまえちゃんの瞳を見つめ返すことしか出来なかった。
いつ見ても、きらきら。


「……手?」

「そう、手」


おうむ返しがおかしかったのか、ふわりと微笑む。あー、チクショウ、可愛い。
なまえちゃんの白く細い指が俺の手をゆっくり掴んで、きゅ、と包む。あったけェ、


「おっきくて、あったかくて、それから、あっという間においしいお料理を作っちゃうの」


――魔法の手、みたい。
目を細め、嬉しそうに頬を寄せる。
触れられた部分から、じわりと熱が広がる。柄にもなく、頬が熱くなるのが分かる。
気恥ずかしくなって包まれた手から目を逸らすと、同じようにほっぺたを赤くしたなまえちゃんと目が合った。
あ、なんか、ヤバそうー


「…あのね、でもわたし、サンジくんの手だけじゃなくて、サンジくんの全部が、好きだよ」

「〜〜〜〜〜………っ」


は。反則だ…!
隠しようもないくらい赤くなってしまった。本当に何だよ、もう、こんなの俺の柄じゃないだろうに。

照れ隠しで奪った唇は、俺のと同じくらい熱かった。


てのひら


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