冷たい氷は彼の武器だ。水はラネシュの思うがまま動き、彼を守る。彼のための世界とでも言うように、軽やかに、それは空を舞い敵を討つ。メリユはいつものようにそれを見る。ぼんやりとした、とらえどころのない硝子のような瞳にしっかりと納める。
「どうしたの?」
バトルが終わり軽く息を吐いたラネシュが彼女に問う、何か変なところでもあったかきょとんとする。 メリユは小さく横に首を振り、ラネシュの手のひらにそっと触れた。彼女は人に触れるのが好きだ。癖なのか何なのかよく分からないけれど。
「ラネシュ、の…水、きれい」
「きれい?」
うん、と頷いてもう一度見せてと彼女はせがむ、まるで手品を見たがる子供のように。いいよと空気中の水分を集めて氷を作り、きらきらとした霰のような光を集結させた眩しい世界を作る。メリユは食い入るようにただただ空を見上げた。何も言わず、動きもせず、ただひらすらに世界に立ち止まる。
きれい。たっぷり間を置いて彼女はようやくそう言った。あなたの世界はとても美しいともう一度ラネシュの手を握って爪先を撫でた。やさしく、いたわるかのように。

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