まだ俺が子供だった夏のある日、酷い雷が一晩中鳴り響いていた事があった。ごろごろと動物の唸り声のような低い音の後、鋭い光とまるで爆発のような大きな音が空間を支配した。
俺は雷なんて何とも思わなかったけれどメリユは光より何より、音に恐怖したらしく小さな手で俺の服の裾を掴んで離さない。
「メリユ?大丈夫だよ、雷は落ちてこないし俺達は電気タイプなんだから」
それでも時々光る空を見つめて、手の力を緩めようとはせず黙ったままだ。
この時彼女は何歳だっただろう?まだ俺がようやく十歳になったか位で、だから少なくともメリユは五歳より大きい事はなかったはずだ。それでも怯えていたわりに泣いたりはしなかったのだから偉いと思う。
いつも通りのような表情の中にほんのかすかな恐怖の色。音がなるたび、僅かに力が強まる服を掴む手。
大丈夫大丈夫。
そう言って服を掴んでいた手を取って俺と手を繋がせ、膝の上に幼いこの妹を載せる。
「俺やメリユもね、何時かあれくらい凄い電気技使えるようになるんだよ」
「…ほんとう?」
「本当だとも」
会話をしながら繋いでいない方の手で影絵を作る。雷の光で。
興味深そうに彼女は影絵を見つめ、でも雷の光
なんて一瞬で消えてしまうものだからメリユは「早く続き」と雷を望むようなことを言った。その時にはもう怯えた目などしていなかった。

雷が鳴る日はいつもこのことを思い出す。今でも時々影絵をせがんでくる妹に、言葉にすら出来ない愛しさを覚えながら。



(この愛に見返りなんて求めません)
(そんなものは要らないくらい君を愛してる!)


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