お風呂あがりの火照った体に冷たいシャツを身につけた。今日は雨だったせいか服まで心なしか濡れている気がする。体が冷えるのと同時にシャツが暖かくなっていく感覚。
ふらふらと足元に目をやりながら外へ出る。この時期ということと夜とが重なって身を刺すような寒さに思わず息を吐いた。この凍えるような気分はまるで心地よいほどの、私に与えられた罰みたいに感じる。自虐的だと笑われるだろうか。
「アリル」
ちょうど私が来た方向から、いつも首を覆ってくれているマフラーと小さな上着を抱えてトルトさんが名前を呼んでいた。ついてきていたんだろうか。
柔らかそうな紫と黒の間の、夜の空をそのまま切り取ったような色の髪がさらさらと風に揺れてどこからかきらきらと光が零れた気すらした。
「アリルがそんなに落ち込んでいる所は珍しいですよね」
「え」
人当たりの良い微笑みを浮かべながらトルトさんは言う。いつも付けているマフラーを忘れるほど落ち込んでいたのでしょうと、夜道の真ん中で。
「…わざと忘れたんです」
「え、どうしてですか?体によくないのに」
「自分への罰に、ちょうどいいかと」
そう聞いたトルトさんは困ったように、視線を私から腕の中で小さく収まっているマフラー達に向けた。罰という言葉は穏やかそうなこの人にはとても似合わない。
その罰は、今どうしても必要なものですか。ようやく言葉を見つけた彼は私に視線を合わせないまま呟く。そういうわけじゃないですと囁くような声で答えるとならば帰りましょう、と微笑んで見せた。彼の静かな紫を音にしたような穏やかな声で。



冬に書いたものなので真冬のお話。でも今は真夏です。しまった逆だった。

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