白に、赤い色はよりくっきりして見えるものだ。
トルトの白すぎる頬の肌に小さな切傷が一つ。痛くなんてないですよと彼は笑うけれど、滲む血の色は驚くほどメリユを悲しくさせる。
「痛そう、なのに」
「そうですか?」
ごしごしと傷口を擦るトルトを触っちゃ駄目と止めた。もし怪我が酷くなったら、きっと彼女はどうしたらいいのか分からなくなるだろう。
驚いた顔をしてからまた彼は笑って、おれは幽霊ですよと言った。
「怪我なんて大丈夫ですから」
「…でも、痛そう」
「痛くないですって」
笑う彼が寂しくなって、トルトの胸にもたれ込んだ。真っ赤になって照れる彼に冷たくないよと言えば不思議そうにそうなんですか、とメリユに聞き返す。
「つめたくないよ」
触れるように守るように、そっとトルトを抱きしめた。孵るのを待つ鳥の卵になったような気持ちになって。




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