お昼寝から目をさます。この目はぱちりと開いてぼんやりからはっきりへと全てが移行する。意識も、視界も。まだ寝ているトルトの卵みたいな感覚。ぷに、ほっぺたをつついてみるとむう、と顔を歪める。おもしろい。ぐりぐり。むぐ。
トルトがゆっくり、なんだろうとでも言いたげに目を開ける。けれどすぐ分かったらしくて困ったみたいに、眉を下げて笑った。トルトのこの表情がとてもすきだ。
「なんですか。」
なんでもない。んーんと首を振って痛くないくらいにほっぺをつねる。ふにふに。マシュマロみたいだ。触り心地も柔らかさもちょうどそんな感じで気持ちがいい。鼻を近付けたら甘い香りがしそうだなあと指を押し付ける。
「トルト、ほっぺたやわらかい、ね。」
「そうですか?…自分じゃ分からなくて。」
不思議そうにさすって感覚を確かめているらしい彼を見つめて、すっと顔をよせてすんすんしてみる。なんのにおいもしないなあと残念と呟くと赤くなった耳たぶが目に入った。ほっぺたはもっと赤い。イチゴマシュマロだ、たぶん。
「甘いにおいする…かな、って、思った…けど、しない、なんか…雨の日の、におい。」
雨の日?トルトはきょとんとしてメリユを見た。黒い鏡みたいな目の中にメリユがいる。こくりと頷いてもう一度嗅いでみてから抱き付くとひえ、そう悲鳴めいた声を出して右腕を空に泳がせる。繋げない手を握りしめて、布の隙間に自分の指を埋めて絡めているかのように、まるでそう思えるように。呼ぶ名前に、だいすきなお菓子より何百倍もの愛を込めて。

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