06.

「涼風ちゃんおはよう!!」

『おはよう琴音ちゃん』

入学式より数日、無事特定の友人を作るのではなく広く浅くをモットーになんだかんだで学校生活を楽しんでおります涼風です。

但し本音で話せる友人が同学年に居ないと言うのはちょっとストレスが溜まるのだけど、中学時代よりかはましか。

その分バスケ部員に当たってしまうことがあるので結構真君に怒られる怒られる。
現在も八つ当たりが過ぎたせいで職員室の顧問の所へ伝言を伝えに行けと命ぜられました。



「……練習試合か、わかった。ありがとな黄瀬」

『いえ』


《「だからやってねーって言ってるじゃないですかっ!!!」
「お前がやったのを見たという生徒が居るんだ。全く……お前は入学してそんなに経っていないというのに問題を起こし過ぎだ。近々退学になるかもしれないな」
「そ、そんなっ!!!」》

……??一体何の話をしているのだろう、お取り込み中のようだけれど。

『あの、瀬川先生。あれって……』

「あー丁度3日前の放課後にガラス割れる事件あったろ??それの目撃者を捜したところ全員が“夕月がやった”って言うんだ。夕月自体問題児だからな、ほぼ確定だろう」

『そうなんですか……』

成程、彼女は恐らく嵌められたんだろう。
私自身助ける義理はないのだけれど、どうにも彼女が中学時代の私と重なってしまってほっとけないようだ。

私も大概だな……。


私は無言で討論している二人の所へと足を進めた。
瀬川は状況がよくわかっていない様だったがどうでもいい話だ。

『すみません、香川先生。ガラス割りの件ですが彼女は犯人じゃありませんよ』

「?……黄瀬か。なに??!!」

この先生自体に関わった事はなかったが私の事は知っているみたいだ。
なんて言ったって私、“花宮真に次ぐ優等生”と呼ばれているからね。

『その日に丁度掃除当番だったのですが、私がゴミを捨てに行く時に彼女に会いました。彼女と一緒に居る時に先生の怒鳴り声が聞こえたので恐らくその時に割れたのでしょう。その場合彼女に犯行は不可能なので、盗み聞きしていた分際で口出しはしたくないのですが彼女はやっていないと思います』

ちゃんと猫被ることも忘れずに指摘した。
成るべく穏便に済ませたいのでこれで納得していただきたい。
というか、優等生の私を信じるのか嵌めたであろう偽目撃者を信じるのか、先生はどちらを選ぶのだろうか。


「そうか……黄瀬と一緒に居たのならやっていないな……。夕月、今回はお前じゃなかったようだな。申し訳ない」

「いえ、わかっていただけたなら良いです」

『それでは失礼しますね』


先生は私を選んだか。
選択は間違っていないと思うよ。

でも所詮は“黄瀬涼風が証言した”という事実が決めたと言って良いだろう。

本当、上辺しか見ない人間というのは……。







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