04.

現在私の掛け持ちしているバイトは3つである。
本屋とコンビニ、そして八百屋だ。

チョイス可笑しいとか言うツッコミは聞き飽きたのでもうやめていただきたい。
選び方なんて労働条件と時間帯と給料以外に何があると言うのだ。

「涼風ちゃん、そこのキャベツ並べておいてくれる??」

『了解しました由美子さん』

今日は八百屋の日なので家に帰ってからすぐバイトへ向かったのだった。

元々ここは夫婦で経営しているらしく商店街の中でも古株で、人懐っこい性格の由美子さんのお陰か信頼の厚いお店らしい。
私もこっちに越してきてから色々良くしてもらっている。

私が一人暮らしでバイトを探している事を会話の中で告げると“良かったら自分のところで働かないか”と、快く受け入れてくれたのだ。


本当に血の繋がりがない人ほど私に優しくしてくれる。

世の中、捨てたもんじゃないな、世の中は。

『終わりました、他に何かすることありますか??』

「ただいまー」

「あら信介、おかえりなさい」

丁度ここの息子さんが帰ってきたようだ。

『おかえりなさい信介君』

信介君は秀徳高校の3年生である。

「あーただいま、黄瀬」

『部活ですか??』

「そうなんだよ、宮地の自主練付き合ってたらいつもより遅くなっちまった。今日は特に後輩の我が儘も酷かったし」

『それはお疲れ様です。ところで何部なんですか??』

「バスケ部だ」

休日によく手伝いをしているので何度かお話ししたことはあったが、何の部活に入っているのかは知らなかった。
てっきり野球少年かと、坊主だし。

ってえ、バスケ部??まさかのバスケ部?!!
こんなところで真太郎との接点を見付けるとはっ……世間は狭いね。

ということは後輩の我が儘って確実に真太郎だろ。
なにやってんの真太郎。

『すみません信介君。いつも真太郎が我が儘言ってるんですよねわかります』

「え、お前緑間の事知ってんの?!」

案の定驚いていた。

『知っているも何も真太郎は中学時代からの友人なので』

数少ない友人の事を忘れるわけがないのだよ。

「あいつに………友人……」

信介君の態度から中学時代から何一つとして変わっていないのだろう。



少しホッとした。
……自分だけ置いていかれるのは嫌だから。






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