38.


その後中三の咲子や夏生、桃井の所業を全部話した。

真太郎や征十郎、敦との話も。

そして、咲子達が何をしたのか。

涼太達に何をしてきたのかを。

黒子の事はその時すっかり頭の中から抜け落ちていたから言わなかったのだが。


『―――というわけ。まぁそんな死にそうな顔するような内容ではないから』

「ごめん………涼風…………本当にごめんね。俺が、俺が不甲斐無いから………」

『だーから別に良いって言ってんじゃん。私が憎かったのは確かに涼太だけど元凶は両親だからね。涼太が謝る様な事はないよ、只。文化祭の時“涼風の事扱使っちゃって”って言われたのはムカついたけど』

「!!あの時聞いてたんスか……ごめん。でも、今涼風にそんな顔させてるのは紛れもなく俺っス。俺、兄貴なのに……いつも自分の事ばっかで、自分の事。咲子の事だってちゃんと把握出来てなかったし……」

そう言われつい顔を触ってしまった。

自分は今どんな顔をしているのだろうか。


「寂しそうな……絶望に呑まれたような………そんな顔してるっス」

私の言いたい事が伝わったようだ。

『そう……でも今は結構すっきりしてるんだ。思ってた事聞けたし言えたし。涼太は何も苦労しないで生きてきたんだと思ってたからさ。話聞けてよかったよ』

「……俺もっス」

『ねぇ、涼太は何が不服なの??なんでそんなに納得のいかないような顔してるの???』

「だって、俺等がしてきた事はどうにもならないし。さっきの話聞いて余計に仲の良い兄妹になんてなれるのかなって……」

『兄貴なんだからしっかりしなさいよ。別にもう涼太の事怒ってないし。でも、これだけは言いたい。私は高校を卒業したら黄瀬家の籍を抜くから』

「え、なんで……」

『あの人達の子供って事にへどが出る。もう修復不可能な位まで親子関係はめちゃくちゃなの』

「じゃ、じゃあ……!!!もう戻れないってことっスか?!!」

『私の考えが変わらない限りはね。まぁ後二年あるし、多分変わらないとは思うけど』

「そんなのっ!!!そんなの……悲し過ぎるっス。俺も、涼風が籍を抜くって言うなら俺も抜くっス」

まてまてまて、どうしてこうなった。


『いやだめでしょ。母親なんてどうなっちゃうかわかんないよ?』

「こんな風にされてきてもまだ母親の心配するスね。涼風は優しいね……。でも、決めたから」

『えーなんだし。私が抜ければ万々歳だから。それで全部丸く収まって万事解決で良いから』

両親だって喜ぶことだろう。
一世一代の親孝行だ。

「……いいわけねぇだろ!!!!」

『Σ!!』






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