35.
幼少期から“涼太はなんでも出来るね”“あー出来る方の子ね”って言われてきて、褒められて。
いつも怒られている涼風を見て天狗だった。
今思えば滑稽だったなって思うけど。
でも同時に変なプレッシャーも感じていた。
今はこんなにチヤホヤされているけど、俺が出来なくなったら軽蔑されるんじゃないか。って怖かった。
だから怒られている涼風が時々羨ましく思えた。
褒められているだけで怒られた事も無くて、本当に両親は自分の事を見ているのか何度疑問に思ったことか。
小学時代は女顔とか言われたりして男友達なんて一人もいなかった。
お前等なんかよりモてるし運動も出来るから羨ましいんだろうってなんでもない振りしてきたけど本当は男友達に憧れてた。
でも中1の時も男友達なんか出来なくて、何もかもがどうでもよくなって荒れた。
女遊びに走ったりモデルやってみたりしたけど、いくら遊んで捨てても“黄瀬君と付き合えただけで十分”“私が悪いんだよ”“黄瀬とヤれただけで十分だよありがとう”“ごめんね、私が不甲斐無いから”とか言われるばかりでドラマで見るような“最低っ!!!”って怒鳴り散らされて殴られるなんて事も無くて。
モデル業だって縦社会はそれなりに厳しいけど陰湿ないじめだって無く寧ろ褒められてばっかりで。
自分のやっている事が間違っていたのも知ってた。
でも怒られないし寧ろみんな肯定されてしまって、結局誰も自分の本当の姿を見てくれないんだろうってもっと荒れた。
でも、赤司っち達に会ってバスケ初心者だった俺は怒られるしいびられるし、憧れだった男友達も出来て本当に嬉しかった。
桃井っち繋がりで咲子とも出会って。
咲子はどんな俺も受け入れてくれて時に叱ってくれた。
俺が求めていたのはこういう人だったんだって運命だと思った。
だから咲子にはかっこいい所見せたくて前みたいに完璧を求めてしまった。
……同時に涼風のことが鬱陶しかった。
自分の家の汚点が憎らしくて仕方無かった。
ぶりっこで厚化粧な妹なんて妹と言う事すら恥ずかしく思えて、俺がクラスで咋に嫌な態度を見せればクラスの連中は涼風を嫌いになってくれた。
元々ぶりっこで厚化粧な所とか、好感を持っている子はあまりいなかったけど。
中3の時は幸せだった。
キセキの皆や咲子と一緒のクラスで、涼風が居たのはまぁ……。
そんなだから咲子が突然消えてなにがなんだかわからなくて、噂じゃ涼風が関わっているんじゃないかとか流れてて。
流石にそんな信憑性の無いことで怒れるわけないから何も聞けなくて。
でも憎悪ばかり募って他の人に当たったりしてしまった。
その間も涼風は家に居ないし両親は涼風のすることに一切口を出さないし。
涼風が外泊して家に居なくて所在を聞いても“涼風は外泊ですって。それより涼太っ………”って話を自分の事にされて。
咲子の居ない生活で話すことなんて何もなくて、でも悪い息子になりきれなかった俺は両親に“うるせぇ”とか言えるわけもなくその場しのぎの会話を繋いで切り抜けてきた。
咲子達が居なくなってしばらくして黒子っちも居なくなって。
俺の心はまた前みたいに荒んでいた。
なのに。
なのに涼風は前より笑っている事が多くなって“俺から大事な人を奪ったのにどうして笑顔で居られるんだ”ってもっと憎悪に駆られてた。
だから正直、今すっごい戸惑ってる。
今まで募らせてきたものの行き場がなくてどうしたらいいのかわからない。
でも。考えているうちに小さい頃見た仲の良い兄妹に自分達もなりたいな、って昔思っていた事を思い出した。
まだよくわからないけど俺は涼風と仲の良い兄妹になりたいんだと思う。
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