26.
涼風に会った時一瞬分からなかったがそこは双子。嬉しくないがなんとなく涼風だとわかってしまった。
実際合ってたしなんか最悪。
その後先輩に話を聞いたら涼風が合宿中の食事を作るらしい。
一日目の事を考えると正論だが、俺にしてみたら最悪以外の何物でもない。
やっと顔を合わせなくて済むようになったのにどうしてまた、と咲子の噂も知っていたから余計に会いたくなかったのに。
色々な思いから夕飯に手を付ける気にはどうしてもならなかった。
そんな俺を心配してくれた先輩につい当たってしまったわけだが。
カレーに関しては不可抗力に近い。
そこで涼風が来てしまったから余計に自分が制御できなくなって言わないつもりだった事まで言ってしまったのだ。
言ってから“流石にヤバイ”と思ったが、後から“別に間違った事言ってないよな俺”と、思いなおした。
そう思った、そう思った矢先の今の状況で少し頭が付いていってない。
泣いている所なんて初めて見た。
確かに記憶を辿ると何処にも御馳走の前で笑っている妹の姿はなかった。
それは妹に才能がないから、そういうお祝い事をする機会がないからだと思っていたがどうやら違うようだ。
剣道部の活躍は知っていたけどまさかそれが妹のものだったとは。
妹が携帯を買ってもらったのは小4の時だ。
あの時は妹ばかりずるいと思っていたが今なら合点がいく。
両親は携帯を渡し、妹を野放しにしただけだ。
現在だって一人暮らしをしているが流石にモデルの給料じゃあ一人暮らしは出来なかった。
両親の仕送りあっての下宿だ。
これじゃあどっちが出来損ないかわからない。
「……涼風」
いつ振りだろうか、妹の名前を呼んだのは。
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