07.
「ちょっと待って!!!」
体育館への道を歩いていると走って来たのか夕月さんに呼び止められた。
『なんですか?』
正直“お使い一つろくにできねぇのか”とか真君に言われるので(今すぐ行ったとしても多分言われるが)少しでも早く体育館へ戻りたいのだが仕方ない。
怒られる覚悟はくくっておこう。
「んでさっき庇ったんだよっ!!!!私とあんたは3日前どころか初対面じゃねーかっ!!!」
そうなのだ、彼女と対面したのは先程が初めてである。
なのでさっきのセリフは私の嘘だ。
『そうですね、正確には一方的に知ってましたけど』
「っ!!……質問に答えろ!!!」
口悪いなぁ、人の事言えないけれど。
どうして助けてあげたのに怒られないといけないのだ、そんなの理不尽すぎるだろ。
『別に貴女を助けたわけじゃないわ。正直私の力が何処まで通用するのか知りたかったと言うのもあるし』
そう、夕月さんの為じゃない。過去の私を救いたかっただけだ。
過去の自分と勝手に重ねて夕月さんを助けることで自分の過去を捏造しようとしているだけ。
「そうかよ……。あんた優等生ぶってるけど性格悪いんだな」
『……どうして助けてそんな言われ方をしないといけないのか私には理解できないけど。それに貴女には言われたくないわね』
本当に理不尽だ。
恩を仇で返すとはこのことか。
「うるさいっ!!!あんたに何がわかるってんだよ!!!優等生で先生からの信頼も厚くて友人関係にも困ってない??ハッ、どーせ両親にも恵まれてんだろ幸せな奴め」
……はぁ。
聞き捨てならないわね。
『本当こういう馬鹿が居るから……。あんたこそ舐めたこと言ってんじゃないよ、“自分が一番不幸なんです”とでも言いたいの??そんなの現実から目を背けて対処法を講じなかったからに決まってるでしょ。甘えないでよ』
「……っ何なんだよお前!!!どうしてお前みたいな奴が幸せで私がこんな目に合わなきゃいけないんだよ!!!!」
ところでどうして因縁つけられているの私。
確かこの人の事助けたんだよね???
間違って陥れたりとかはしてないよ………多分。
別に他人にどうこう言われても構わないけど(どうせ理解なんてしてもらえないし)想像でものを言っちゃいかんよ、高校生になったんだろお前。
『幸せ?一体貴女に何があったというの??言いたくないのなら構わないけど言って楽になるなら言いなよ』
「……父さんが外に女作って出てった。それで母さんは無理して働くし、婆ちゃんはすべて聞いてショックで寝込んじまうし………もううちはめちゃくちゃなんだよ…………。それなのに友達なんて作ってへらへらできねーよ………八つ当たりなのはわかってるし苛められても仕方ないとは思ってるんだ………」
さっきまでの態度が嘘のように潮らしくなってしまった。
確かに大変だったのね。
『じゃあ無理なんてしなくていいんじゃないの??自分が正しいと思った事をしていれば自然と理解者は現れるよ。所詮私の言う事も他人事だけどね』
真君が私を救ってくれたように、征十郎や真太郎が気付いてくれたように。
敦が瑠樺が江奈が祥吾が友達になってくれたように――――――。
『……まぁ何か言いたい事が出来たら私の所においでよ。話くらいは聞くから』
“じゃあ”と、その場を後にした。
やばいな、結構時間押してる……真君にぶっ殺されるよ怖いよ。
夕月さんが“黄瀬……涼風…………か……………”と呟いていたのを私は知らない。
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