ピエロと道化師 [ 3/49 ]
帝光中に通い始めて早三年。
三年とは本当に早いものよ、小学生の時は長く感じたのに。 それほどまでに自分が年をとったのか。
毎日通学路ですれ違う他クラスの子に“おはよぉー”と厚化粧に磨きのかかった顔で手を振るのが日課である。
その振られた子達は“朝から嫌なもん見ちまったうげぇ”って顔しながら「おはよ!涼風ちゃん」と、笑うのである。なんとも滑稽だ。
今更ながら名乗っておくと“黄瀬涼風”、あの“きせりょ”の片割れである。
さっきの彼女等も私が“きせりょ”の身内でなければ「ぶりっこきもっ」と、せっかくの挨拶をシカトして去っていったことだろう。
別に好きでぶりっこを演じているわけではないのに。
……語弊があった。好きではないけれどぶりっこキャラを五年以上も演じてくればもう日常なわけで、嫌々ぶりっこやってるわけでもなかったりする、ようは普通。
ん??あれ、涼太か。
学校へ着くと教室に居た涼太と目が合った(すぐ逸らされたけど)。
そんなに私の事が嫌いか、私もあんたの事嫌いだけど。
私の厚化粧ぶりっこキャラは主にバリケードである。だから身内と判断すればちゃんと素で話すし、化粧だってしていない。
頻繁に外泊しているのも家で厚化粧ぶりっこキャラでいることに疲れる為である。
両親に“今日は泊まる”と連絡を入れれば“わかった。ご迷惑のないようにね”と返ってくるだけだ。よもや定型文と化している。
私の事など何の興味もないのだから当り前か。
これが涼太であればうちの両親はWを駆使して細かく尋ねることだろう。
それを鬱陶しがっているのだから涼太も幸せな奴め。
ああ、教室に着いてしまったよ。自分と同じ金髪が目障りで仕方がない。
『真太郎ぉーーおはよぉ』
「ああ、おはよう涼風」
隣の席の真太郎と軽く挨拶を交わして席に着いた。
真太郎は私の良き理解者である、勿論征十郎も。(後一人居るのだけれど割愛させてもらおう) 何かあれば家に泊めてくれるし愚痴まで聞いてくれる。
他の人間は私に敵意しか向けてこないというのに。
実の両親ですらそうなのだから(敵意ではないにしろ好意を向けられたことはない)当り前か。
関係のない話、涼太に唯一勝っている事と言えば勉学だけだ。
それだって今一度褒められた事がないので優れていると言えるのか謎だが。
少なからずテスト前に涼太の前で一切勉強しない私なのでさぞかし苛ついていることだろうざまあ。
HRが始まったようだ。
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