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家に帰ると花宮ママが死んだふりをしていまs……
『花宮ママただいま!!ちょっ、大丈夫??!!』

本当何してんのこの人。

花瓶の水が玄関にぶちまけられていて、(花は死守されていたが)花宮ママが花を掴んだまま倒れていた、説明に困る体制で。

「おかえり涼風ちゃん。いやぁ……水取り換えようと思ったら足元にあったスリッパに躓いて……えへ」

私の知っている人の中でこんなにも“えへ”の似合う人は彼女しか居ない。

「水は俺が換えとくから母さんには夕飯の用意してほしいな」

「わかったわ。真、お願いね」

「ああ」

花宮ママは自他共に認めるドジっ子だ。

これで美人なんだもの。ドジっ子美人なんてもう……そっちの趣味がある方に狙われやしまいかと心配です。


因みに私も真君も違う意味で猫かぶりをしてます。
学校までとはいかないし私の場合はほんの少しだけ。

流石に口の悪さ全開はよくない。

真君も主にこっちが理由だろう。


他人の不幸は蜜の味とか言ってる真君だけれどそんなこと両親の耳に入ったらどうなってしまうのだろうか。



真君は私と違う意味で心に闇を持っている。

花宮家家長は検事であり役職までは覚えていないが上層部だと記憶している。

母も名家の生まれのようだし周りからのプレッシャーとか私にはわからないけれどあるのだろう。

時々花宮パパと二人でお話ししているし、そこから戻ってくると必ず大きなため息をつく。


いつから何を言われているのか知らないが、私は真君が少しでも気持ちの落ち着ける場所になりたいと思う。


真君には笑っていてほしいのだ。



それに真君はラフプレーだって本当はよくない事であると十分に理解している。

理解している上での行為だ。

私はラフプレーを悪いことだとは思わない。

ファウル貰いに行くのとラフプレーの違いって一体何なのだろうか。

あまり変わらないじゃないか。

結局どちらも接触事故で、気付かれるか気付かれないかの問題だし行為を起こした本人に損はないのだから。


なのに皆、真君を“悪童”なんて呼ぶし試合終わりに暴言を吐く人間も多い。


私にしてみれば彼等の方が歪んだ人間に見える。

スポーツで絶対なのは審判だろうに、文句があるのなら審判に言いなさいよ。



とにかく私は恩人である真君に言うだけならまだいいが何かするという事だけは許さない。

持てる限りの知恵と暴力でそいつを社会的に潰してやる。

「涼風、花瓶の用意できたから戻るぞ」

『はーい、真君足元スリッパあるから気をつけてね』

「は?………っ!!!」

………やはり花宮ママの子か。





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