09. [ 12/49 ]
電車に揺られているうちに眠ってしまったのか隣が先程の煩さが嘘のように静かになった。
そういえばあの時も……………
こいつと会ったのは俺が小5の時だった。
その頃はまだ自分的に純粋だったと記憶している。
ある日学校帰りの公園で一人遊んでいる女の子を見つけた。
時間も早いとは言えなくて、この辺りは変質者が出ると噂があったので何故かお節介を働いてやろうとしていたのだ。
「おい、お前。あぶないからそろそろかえれ……よ、泣いているの??」
初めて会った時涼風は泣いていた。
『な、ないてないよっ………。おにいちゃんも暗くなっちゃうから………早くかえった方がいいよっ…………』
明らかに泣いているのに涼風は否定した。
その姿は泣いている事を否定しているだけじゃないように感じたんだ。
「………お前が帰るまで、帰らないから。」
大体こう言えばこう返事が返ってくると本能的に理解していたからこれで素直に帰ってくれるだろうと思った、思っていたのだが。
そうしたら……
『………帰るところがないの。昨日、おうち帰らなかったらお母さんおこって、……“あんたのせいでごはんがむだになったでしょ、なんで一言いわなかったの!!”って、……それで………今日はかえってくるなって…おうち出されちゃった………』
ぽつりぽつりと話し出した。
何をやっても双子の片割れである兄しか見ていない両親に心配かけたくて家出を決行したそうだ。 だが、不運にもその日に兄がサッカーの試合で優勝して帰ってきた。
夕飯は御馳走で勿論涼風の分もあった。
普段よりも多く作った挙句涼風も居ないとなってご飯が予想以上に余ってしまったようだ。
そして次の日帰宅した涼風を見ても何も言わなかったが、余っていたご飯を見て思い出して怒った、と。
結局涼風は自分が見られていない事を再確認させられた挙句上乗せで幼心をズタボロにされたわけだ。
今放っておいたらこいつはこの世から居なくなってしまうのではないかと、初対面の俺でもわかる位こいつは壊れていた。
そして自分でもわからないうちに涼風の頭を撫でて
「もう大丈夫、おれの家においでよ」
今思えば思い切った事をしたものだ。
本当、うちの両親が理解のある人で良かった。
あれ以上涼風が壊れなくて………良かった。
家に連れ帰った涼風を見て一瞬目を丸くした母親は優しく俺に状況説明を促した。
たまたま父親も居たのでそのままリビングで当人に話すように俺から言ったのだった。
すべてを聞いた両親は
「……そうか。」
「………涼風ちゃん。よし、もう大丈夫よ!!今日は行くところもないのでしょう??うちに泊まっていきなさいな。」
『……いいん………ですか???』
「子供が遠慮なんかしているんじゃないの、黙って甘えていれば良いの。」
「そうだぞ。これからも辛くなったらいつでもうちに泊まりに来ると良い」
『ありがとう……ございま…………す』
「もぅ!!涼風ちゃんは今日からうちの家族の一員なのだから敬語はなしよ!!」
『はい……あ。……うん!!』
泣いていた顔に少しばかりの笑顔を見た。
あれから俺は涼風の兄貴分なんだが……時々俺は涼風とどうなりたいのか疑問に思う事がある。
本当に兄貴分で満足しているのか……と。
………とまぁ、そんな事を考えながら現在まで来てしまったのだが未だに気持ちの整理がついていなかったりする。(試しに女と付き合ってもみたが変わらなかった。)
今は涼風が笑ってくれていれば良い。
まもなく〜〜○○駅〜〜〜〜○○駅〜〜〜〜 「おい涼風、そろそろ着くぞ起きろ。」
ペシ 『ちょっと痛いよ真君、………もしかして私寝てた??』
「人の肩枕にしてぐっすりな。」
『すみませんありがとう』
「……別に」
『真君、大好き!!!!』
「はいはい知ってるよバァカ」
『ちょっ!!真面目に聞こう?!!』
今はこれで十分だ。
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