只の一般人です




月本不動産――今日は光穂ちゃんに用があってきました。
いや、正確には私の妹の優奈が一昨日月本さん家にお泊りに行ったんでその迎えに来たんです。


インターフォンを押すと、小さい女の子(確か光希ちゃん)が出てきた。
なんでも光穂ちゃんと優奈は公園に遊びに行ったらしい。

優奈曰く“公園に迎えに来たら殺す”だそうで。(光希ちゃんが伝言受けた

なんで余所ん家の子にそんな物騒な伝言任せるかなぁ。


仕方ないので一回家帰ってから夕方来ようと思ったら、月本家の奥さんがうちで待ってなさいとのこと。
有無を言わさない迫力で…(そりゃあ今思い返しても恐ろしい)月本家にお邪魔することになりました。







リビングに通されたのですが、その時点で私の死亡フラグが乱立しました。

もともとHPの少ない(普段から画面が黄色い)私にこれは神様…あんた悪魔ですね。

なんということでしょう。
街でよく見る不良様が3人

優奈…貴女はここに二泊したんですか。
今優奈をすごく尊敬しました。

自分がそうなりたいとは到底思いませんけど。


いくら友達の家とはいえこんな厳ついお兄様に囲まれて、さぞ楽しいお泊り会を過ごしたことでしょうね。

私は幼馴染の将五と拓海……の友達はアウトだけど2人なら怖くないです。



「おい光希―!!その人は?」

「名前さんだよ。泊りにきてた優奈ちゃんのお姉ちゃん」

「あーあの糞餓鬼」

ちょっと待て不良に糞餓鬼言われるなんて、あんた一体何やったのよ?!命知らずにも程があるでしょ!!お姉ちゃん頭痛くなってきたよ。

これ家に帰る前に死ぬんじゃね???私。
回復の泉(自宅)に着く前に力尽きるんじゃね??

私が何したって言うのよ全く……。

「おい。光政」

「さーせん」

「おい、ソファー座れよ」

『あ、失礼します』

うーん。やっぱりすごく怖い。

優奈マジ早く帰って来て。









光希ちゃんによると光政君は私とタメらしい。

何その要らない情報!!!

それが災いして私の話し相手になってくれてます。

この仕打ち、誰かに呪われてるんじゃないかと疑わずにわいられないレベルなんだけど。


『あのー、もしかしなくても鳳仙の月光兄弟って………』

「あー俺等だわ。なんだ知ってんのか」

『はい。兄情報なんですけど』

「なぁ、敬語やめね?タメなんだしよ」

『あー、うん。わかった』

分からないです、なにもわからないです。

「それよか、兄貴って高校生なわけ??」

『うん。お兄ちゃんが鈴蘭生なんだ』

ガタガタガタッ
Σな、なんで光政君と光信さん、光義さんもずっこけるの??
なんか私いけないこと言った????


あ。
そういえば鈴蘭と鳳仙って敵対関係にあったね!!!私ってほんと馬鹿っ!!!!


てか今更だけど私無事に帰れる???
HPもうないんだけど無事帰れる????

「は?え?誰???俺の知ってる奴???」

『知ってるかはわからないけど、花澤三郎っていうの』

「え、ゼットン?!」

あーそう言えばお兄ちゃんそう呼ばれてた気がする。

『お兄ちゃんってそんなに有名なの???』

馬鹿で有名とかなら納得するんだけどね。

「有名も何もここらの四天王だぞ????」

『へー。知らなかった』

「反応薄っ」

『いや興味ないし。私、お兄ちゃんの友達が居る時はなるべくお兄ちゃんの部屋に近づかないようにしてるから。あ違う普段からだったわ』


だって、一回エロ本読んでるところに出くわしちゃったからね。

あの時はまじどうしてやろうかと思った。

「ははっ。お前おもしれーな」

『そう??』

「なんか変に肝が据わってる所とかゼットンと兄妹なのに全然似てない所とか。よくよく考えてみると妹の方は兄貴に似てんな」

胆なんて座ってませんよ、ただポーカーフェイスが上手なだけです。

『よく言われる。特に優奈は性格がお兄ちゃん似だからね。そういえばうちのが迷惑をかけたようで』

糞餓鬼だもんね。

「あーあいつが“光政さんの部屋にはエロ本隠してあるの?お兄ちゃんの部屋にはあったから”とか言って光穂と一緒に部屋入ってきたんだよ」

そりゃぁ糞餓鬼ですね。

『ほんとごめんなさい。優奈にはきちんと説教します』

「ん?おねぇ何?なんか呼んだ?」

振り返ったら優奈が居ました。
只今やっと御帰還ですよこの糞餓鬼。

どうしてやろうか。

『呼んだじゃないでしょ。光希ちゃんに変な伝言頼むとこから始まって、光政君の部屋入って変なこと聞いたりとか何やってんのよ。…うちの恥晒すのやめて、頼むから。恥晒しはお兄ちゃんだけで十分』

「あーね。でもそのお兄ちゃんからの入知恵だけどね???」

………あらそう。
あいつは本気で私を怒らせたいのね。


『優奈分かった。よーくわかった。家帰ったらお兄ちゃんの部屋のエロ本探ししようか。見つけ終わったら季節外れの焼き芋しましょう』

「わーい。焼き芋」

月光兄弟(3人)は思った。
“大人しそうな奴ほど、怒らせると怖い”と。

『それじゃあ、失礼しました。光政君、話し相手になってくれてありがとう。光信さん光義さんお邪魔しました。光穂ちゃん光希ちゃん優奈のことありがとうね。お母さんによろしくお伝えください』

「光穂ちゃん光希ちゃんばいばーい」

家への帰路はどうやって兄に落とし前つけてやろうか考えながら帰りました。
エロ本焼却は確定。


只の一般人です


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