シスコンではないが仲良しです




アッヒャッハ
『あ、将五』

なんだか一番会いたくない人に絡まれてしまった。


名前

リビング

転がる酒の缶。


兄に絡む姉。


この条件の時はやっかいだから普段はどうにか回避してきたのに、今日はついてない。

っていうか、いつもよりひでぇ気がするの俺だけか??

“あ、将五”なんて、いつもと変わらぬ可愛い声で自分の名前を呼ぶ姉は、それはそれは大層可愛いのだが。

この状況が悪すぎることは明白だ。

隣で下僕と化した尊敬すべき兄を見たらもうそれは哀れで…哀れで。

『どーんぺりもってこいやぁー』

「姉さん、ここ家だから」


『あっはー。しょーごーきゅんはいりまーす』

もう駄目だこの酔っぱらい。


「将五、ちょっと上行ってろ」

そうしたいのは山々なんだけどな…姉さんに抱きつかれててそれどころじゃねぇんだよ。


ぶつぶつ兄貴に文句言う言葉を考えてたら腰のあたりが急に重くなった。

「姉…さ……て、寝てるし」

気持ち良さそうだなぁ、オイ。

「兄貴。姉さん二階に寝かせてくるわ」

とりあえず、話はそれからという事で。

「おー、襲うなよー」

襲うか!!
兄貴じゃねぇし!!
一応兄貴と違って健全で通ってるんだけど、俺。


やっぱり文句を考えていたが、しっくりする言葉が浮かばず黙って姉貴を二階へ運んだ。


兄貴は置いといて、とりあえず世話の焼ける姉なことは確かです。






姉貴を置いて戻ってみれば、酒の缶の城に兄貴が住んでいた。


どういうことなの。

さっきよか随分と量増えてんじゃねぇか。

「おつかれー」

「兄貴もな、つーかさっきのどういう状況?」

普段は自分が酒弱いの知ってるからそんな飲まねぇのに。

「あ、あー………彼氏にフられたんだとよ」

それでやけ酒か。
わかりやすいな……


「つーことはさっきまで兄貴…」


「一口も酒飲んでねぇぞ」


一人であんだけ飲んだのかよ…


「なぁ将五…」

「あ?」


「…許せねぇよなぁ…」

Σ
「な、なにが?」

なんかすっげー嫌な予感するんだけど。


「三股だってよ…二股ならともかく三股だとよ」


兄貴の二股はオッケーな理由は分かりませんが。
とりあえず、兄貴の目が据わってて同じ空気吸いたくねぇ。

現役時代の一番血走ってた時期の目してやがる……。

「そういう奴が女を泣かせて姉貴みたいな奴を増やしてくんだ。それに、やけ酒程度で済みゃあいいが、下手すれば一生もんの傷を負わせることになるんだぜ。許せねぇなぁ……」


なんでそこに二股は入ってないのか聞きたかったが、流石に空気読んだ。

それどころじゃねぇ。


「兄貴…まさか」

「明日の午後9時」

あんなに目の据わった兄貴はほんと久し振りに見たわ。



明日俺も行かないと…姉貴の元彼死ぬわ。


洒落にすらなんねぇ……。


「わかった」

その後?そんなものはなかった。

ボコボコにされてケツの穴三倍にされてた元彼とか、そんなもの俺はしらねぇ。


一言だけ言わせてもらえるなら、なんやかんやでうちは仲良しってことだけだ。


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