靴箱にラブレター
ガチャ
バタン
「………何お前ニヤニヤしてんだよ。気持ち悪」
下駄箱の扉開けてニヤニヤしてる高校生男子(男装中)に向かって俺、黒澤はため息と共に言葉を発した。
『はっ、酷いな黒澤君。これを見たまえ』
軽いムカつきを覚えながら名前の手の中を覗き込んだ。
“可憐で
美しい貴女が
愛しくて
僕はどうにかなってしまいそうです
貴女の女神の様な頬笑みをどうか僕だけのものに
付き合って下さい”
「…ポエム?」
『ラブレターさ』
そりゃあ見りゃわかるけどよ。
きっもちわるっ!!!!
ラブレターは男子の憧れみたいなとこあるけど、これはなんか気持ち悪ィ。
「で、それがどうした」
そんな気持ち悪いのお前貰ったの??嬉しいのか??俺、こいつとダチやめようかな
『気持ち悪い』
お前もかよ!!
さっきまでのドヤ顔は一体何だったんだ。
『良く考えてみたまえよ。ここは鈴蘭男子校。泣く子も黙るカラスの学校。……女子来なくね?』
「あー……あ゛−……ドンマイ」
ってことはホモか、男に可憐とかねぇわ。
あ、でもこいつ女だから一応成立はしてんな。
『ど、どうしよ黒澤!!』
ついに泣きついてきやがった。
だからさっきまでのドヤ顔何処行った。
「まぁ一応貰っとけよ」
『いらねーよ!!こんな不幸の手紙より不幸になりそうな手紙っ!!!ってゆーか返事は放課後に…宮原…女子の前に居るの…で…あれ?これ俺宛てじゃねぇかも』
「あ?」
再び覗き込んで見ると“返事は宮原女子の前で待っているのでその時”とのこと。
…どう考えてもこいつ宛なら鈴蘭で事足りるしちげーな。
じゃあ誰だし。
ぴらリと紙を捲ると“神戸好克”の文字。
ブッチャー!!
あいつがあんなラブレターを…
可笑しい半面
なんか泣きたくなった。
『あ、…ブッチャーだったの。あいつ…もう少し優しくしてあげよう』
この悪魔が情けをかけたぞ。
「名前」
わかってるな、という意味を込めて名前を呼ぶと。
『…わかってる』
ラブレターはしっかりブッチャーの下駄箱に入れられた。
後日。
「なんか今日ブッチャー荒れてね?」
「近付かねぇ方が良いぞ」
「だな」
という会話を耳にしたが
『黒澤』
「なんも言うな」
きっとフられたんだ。
触れてやるんじゃねぇ。
世の中には知らぬが仏という言葉もあるんだ。
俺等はそろって忘れる事にした。
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