06.


「はーい、そこまで。お前らさぁ多勢に無勢ってかっこ悪いよ???ってゆーか目障り、なあ兵助」

「そうなのだ。先程から女の幸せばかり語っているが、少なくとも授業以外で傷物にしているのはお前達だぞ。最も優秀な彼女の事だ、怪我なんて殆どしないからお前達しか原因なんてないけどな」

「頭も力も無い癖に人を引き連れて襲うなんてさ、お前等山賊の方が似合っているんじゃないの」

私の前に現れたのは同じ組の二人でした。

彼等とは数回話をしただけの間柄で、でも一度として私を苛める側に立った事の無い数少ない方達でした。

傷の手当てを手伝ってくれた事はありましたが助けに来ることはなかったというのに。

一体どうしたと言うのか。

その時は自体が掴めず私自身戸惑っておりました。

「なんだよ!!!女庇うのか?!!」

「今まで干渉してこなかったくせに今更善人ぶってるんじゃねぇよ!!!」

「善人??いつ俺が善人になったって??お前等悪人って自覚あったのか。はー嫌になっちゃうね」

「この事は先生に報告する。お前達の処分は免れないだろうがその前にこの子に言う事があるんじゃないか??」

「っ!!……なんでだよ。そんなことしたらっ」

「そうだね、退学だろうね」

「それがどうした。その処分では足りない位だけどな」

「こいつ等もやっちゃえば先生に言われなくて済むよな?!!」

「そうだ、尾浜も久々知も標的にしちゃえばいいんだ」

私抜きの会話がどんどんと進んでおり、私事だった筈なのにもう付いて行けません。

ですが、これだけは分かりました。
“関係のない人が巻き込まれようとしている”

そんな事あって良いわけがありません。

『あの、……』

「だーいじょうぶ!!この勘ちゃんと兵助にまかせてっ!!!」

「雷雲さんは気にしなくて良いのだ。ただそこに居てくれればいい」

「そんなこと言っていられるのも今のうちだぞ!!!」

何を根拠にそんな笑顔が出せるのかわかりませんが、その時“この人達なら大丈夫”という感情が私の中に確かにありました。

「だって、なぁ勘ちゃん」

「ねぇ兵助。てっつまるせんせーー!!聞いた??ねぇ聞いた?!!」

「煩いちゃんと聞こえておったわ!!!馬鹿もの!!!」

その後すぐに私達の居た場所のすぐ後ろの木から木下先生が降りてきました。

一体いつから居たのでしょうか。

「いった!!先生、なにも殴らなくたって良いじゃないですか!!!」

「お前は殴られても煩いな!!!」

「それよりもこいつ等の後始末は木下先生に任せても大丈夫ですか?」

「兵助、冷静ね」

「俺も殴られたくないからな」

「ああ構わん。その前に雷雲」

『……なんでしょっ……いたっ!』

私も殴られました。
尾浜君を殴った時よりも手加減はして下さったようですが痛いものは痛いです。

「なんで言わなかった!!そうやって一人で抱え込んだってなんも良い事ねぇぞ」

『……誰を信用して良いのかなんて分かりません。忍は仲間ですら疑えと言うじゃありませんか』

「………はぁ。なんやかんやでお前が一番問題児だな。こうやって態々お前の為に俺を呼んで待機させていたこいつ等位信じてやっても損はねぇと思うがな」

『……はい、そうですね』

そんな事を言われても今まで関わりなんて殆どなかった彼等が何故私の為にここまでしてくれるのか、見当もつかないのだ。

信用以前にその真意が知りたい。


「まぁ、そういう事だから尾浜、久々知。雷雲の治療してやれ、少しばかり怪我している様だ」

「じゃあ雷雲さん、保健室行こうか」

今は彼等の行為が善意であると甘えておこうと思います。




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