人事を尽くしましょうか


「今日の練習はここまで!!各自しっかりダウンしてから帰るように!!!!!」

「「「「「「「「「「っざ――した―――――!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

あ――終わったか。後は個人練習だけだし、そろそろ梓迎えに行こうかな。

黄瀬ギャラリーは終わった途端驚くほどの速さで散っていった。
所詮そんなもんか。バスケに興味のない連中だしな、仕方ないか。


『梓―帰るよ――――――――――』

「優子!!!いつも付き合ってくれてありがと―!!」

私より幾分か小さい梓が追突してきた。地味に痛い。

『ぐふぅ……いや別に構わないよ。』

家帰ってもすること無いし。
おいそこ、可哀想とか言うなシバくぞ。


未だヒリヒリするお腹をさすっていると“そうそうお兄に用事があるんだった!!”とか言って私の腕を引っ張りながら森山先輩の所へ走っていった。

ちょやめて!!あんたどっからそんな力出してるの?!!何この子怖い!!!

さっきの腹への突進も手伝って身体がミシミシ言っているよ!!!!!


「お―――――兄!!!!あ黄瀬君やっほ―――――部活お疲れ様!!!!」

おい何で森山先輩呼びながら黄瀬君に手振ってんだよお前先輩に用事あったんじゃないのかよ。

「梓ちゃん!!どうもっス!!!」

お前も振り返してんなよな。森山先輩困っているじゃないか。

ペシン
『おい梓。あんた先輩に用事があったんじゃないの??何脱線しとるんだ』

「そうでした――。お兄それd…「なんて君は美しいんだ!!二階席から見てくれていた子だろう?君のおかげで今日も頑張れたよありがとう」……お兄。」

………やっぱり兄妹ね。私達も似てるのかしら……やだわ恐ろしい。

『えっと……部活お疲れさまでした森山先輩。』

「ああ!!これは運m……「お兄優子に手出さないでくれる??汚れる。あと今日お母さんおばあちゃん家泊るから二人で食べてねって。」……わかった。」

もうなんも言わんぞ森山兄妹。後ろで武内先生と早川先輩と小堀先輩と笠松先輩が苦笑いで見てるぞ助けろ先輩方。

ってか顧問武内先生だったのね。知らなかったよ。

「それにしても久しぶりだな森山妹。」

「武内先生お久しぶりです!!!いつもお兄がご迷惑をおかけしてすみません」

深々と頭下げて挨拶してるけれど……良い子なんだけれどね、迷惑かけている前提の会話なのね。

「…で、緑間は黄瀬の応援にでも来たのか??」

少し話しこんだ後にやっと気付いたのか私に話しかけてきた。
んで黄瀬限定なんだよこの糞狸。

「違いますよ――黄瀬君の応援に来たのはわたしです!!優子は付き合わせただけです。」

何かいいたそうな顔だがなんだよそんなに私が嫌いか。それとも黄瀬に恨みでもあるのか。

本人も居るしあまり本音でお話ししたくないのだけれど……。

「あそうそう聞いて下さいよ先生!!さっき教室で優子誘った時に“なんでわざわざ教室で会えるのに黄瀬君見に行くの?”って聞かれたんですよーー。」

梓にも先生の何か言いたそうな顔に気付いたのかさっきの会話を持ちだしてきた。

ありがとう梓。大好きよ梓。でも……しかしそれはヤバイ。いろいろとヤバイ。絶対誤解が生じる。

「“それで――――黄瀬君よりあんたのお兄さんの方がかっこいいと思うけどね”って優子趣味悪いでしょ―――!!」

おい、それを本人の前で言うのか??今にも黄瀬が掴みかかりそうな勢いで見つめてくるのだけど。怖いのだけど。

なんなの自意識過剰すぎて……今風に草生やしたいわ。


「ちょっ優子ちゃん?!!俺より森山先輩の方がかっこいいって……俺モデルなのに……」

黄瀬君は明らかしょんぼりしてるし先輩方はびっくりして固まってるし武内先生はまた色恋沙汰かって顔して見てくるし………もうお前等バスケしろよ。

『語弊のある様なので言わせていただきますけど、私は黄瀬君<森山先輩だと言っただけですよ?ちなみに黄瀬君<先輩方です。』

「な、なんでなんスか?!!」

そんな涙目で見つめんなよ男でしょうに女々しいな。

『私、バスケ頑張っている人が好きなの。森山先輩は独特なフォームでシュートを確立していますし、早川先輩は重要といわれてるリバウンド取るの上手です。小堀先輩は自分の仕事だけでなく周りを見て全体のサポートに回ってるし、何より笠松先輩は司令塔としてチームメイトが一番生きる方法をその時々に考えて指揮している。そんな先輩方を純粋に尊敬しますしかっこいいと思うのは当たり前だと思うんですけど。この際だから言っちゃいますけど黄瀬君、あんた本気で部活取り組んでないでしょ?舐めてんの??そんなんじゃ頑張ってる先輩方の足引っ張るだけよ。』

ノンブレスで言いきった私を褒めてくれる人は多分居ないだろう。後半暴言だし。

だけど武内先生まで吃驚した顔しててしてやったり感はあるので良いとしよう。

「そ、そんなのあんたに何が分かるんスか!!!」

あ、やっべ。怒らせちゃったかも。仕方ない。不本意だけれど真太郎を見習って人事を尽くそうかしらね。

『わかるよそんなの。何悩んでるのか知らないけど先輩方はどんな黄瀬君でも受け入れてくれるはずだよ。何の為のユニフォームだ、5人同じ服着てコートに立ってる意味わかってんのかっつーの。甘ったれんなよバァカ。』



少し言葉は厳しいかもしれないけれど彼にはこれくらいが調度良いだろう。



「……ッス。そんなこと面と向かって言われたの初めてッス。優子ちゃんありがとう。なんかフッ切れそうな気がするっス。」

しばらくわなわな震えていたかと思ったら自分の中で答えが出たようで力なく笑っている黄瀬君。

まぁ……良かったんじゃないかな。

「優子――――。何気に口悪いよね。」

『今それを言うな今。』

雰囲気ぶち壊しよもう。

「なぁ……お前、男バスのマネやる気ねーか??」

『……??笠松先輩早まっちゃだめですよ』

こちらを見ないで突然何を言い出すのかと思ったら。え?マネとかwww

ついつい草生やしてしまったじゃないか。

「早まってねーよ!!!部員のことそこまで理解してくれてるマネージャー居たらもっと頑張れんじゃねーかって思っただけだ。」

「俺も賛成かな。黄瀬ファンじゃないってところが一番だけれど君になってもらえたら俺、君のために毎日頑張るし。」

いや、部のために頑張れよ。

「オ(レ)も、(リ)バウンド褒めても(ら)ったのはじめてだし!!お前にマネやっても(ら)えた(ら)う(れ)しい!!」

「俺としても笠松の負担が少しでも減るだろうし……無理にとは言わないけど……やってもらえないか?」

何故だ、その言葉に涙が出そうだよ……苦労してるのね。

「俺も、はじめはまた黄瀬ファンかと思っていたが……見た限り使えそうだしお前ならマネにしてやらんこともない。」

武内先生ェ………。

「優子ちゃんなら安心ッスね!!」

いやちょっと待て。私やるなんて言ってないけど??ねぇ、ちょっと待って!!

「良かったね―――。これで私も安心してお兄ほっとけるわ―――」

『え。何それ決定事項なの??拒否権とかは?』

「「「「「「「え、多数決(でしょ)(だろ)」」」」」」」

民主制ェ………。

『……はぁ、わかりました。しかしやるからには人事を尽くさせてもらいますので。よろしくお願いします。』


緑間優子、一生の不覚!!!!海常の男バスマネになってしまいました……。
真太郎には……言わなくて良いか。

そしてここから緑間優子の奮闘は始まるのであった。


続く?!みたいなね。