ああ、キスって落ち着く。また土方さんとしたいなあ、時間なんか止まれば良かったのに。

「何考えてんの?」

「気持ち良いなぁ、って思ってたよ。山崎さん、嫌?」

「嫌じゃないけど、君じゃなきゃもっと良いんだけどね」

「私もだから安心していいよ」

「もう、可愛くないんだから」

「嘘つき」

「……よくわかったね」

「残念ながら山崎さんのことはわかるの」

私みたいなのが好きなタイプなんだろうな、私も山崎さんみたいなのがタイプだったら上手くいったのだろうか。
私の部屋を自由に出入り出来るのは土方さんではなく、山崎さん。元々は彼との出会いが土方さんとの
出会いのきっかけだったのだ。
彼がいなければ土方さんと知り合えもしなかったのだが、今のこのだらしない関係はいつかの為に精算してしまいたいのだが私の物足りなさを埋めてくれる存在が居なくなってしまうことに今はまだ耐えられない。

友達以上の関係は認めるけど愛情だとかは感じない、ただ相性が良いってこういうことだと思う。

「冷蔵庫のハンバーグ食べても良い?」

私から離れ、冷蔵庫のハンバーグを存在を知っていた山崎が台所に向かった。
必ず確認はするものの食べるつもりで聞いている、そして私も山崎が来る可能性を考えて多目に料理を作るのが当たり前になっていた。
料理くらいは出来ないと男と一緒に居られないしね。

「いいよ、冷蔵庫にホワイトソース、冷凍庫にデミあるから好きなの使ってよ」

「俺デミ派。流石にマヨネーズは作らないんだね」

「むかつく」

「俺が?副長が?」

「わたしの全て」

「また、そうやって自分でわざわざメンヘラになりに行く。馬鹿じゃないんだからいい加減やめなって」

ウィーン、と電子レンジの音と同じぐらいの声量でまた腹立つことを言われた。
私のマヨネーズが食べたいから一緒に暮らそう、とか言う台詞を妄想して何度も作ったけど、最高のマヨネーズの味なんか知らないから結局一度も土方さんには渡せなかった。お弁当とか手料理振る舞うなんて、彼女でもないのに引かれるに決まってる。

「やべ、ホワイトソース派に目覚めそう」


冷凍していたデミグラスソースをレンジで解凍している間にホワイトソースを味見している山崎が言った。

「でしょ。まあ、私はどっちも好きだけど」

「あー、副長も勿体ないよなあ。こんな旨い飯作れる奴隷がいんのに」

「奴隷じゃないもん」

「彼女にしたら太るだろうなぁ」

「わたしと付き合いたい?」

「まだいいや。つか、今日泊まってっていい?」

「いいよ。明日休みだし」

山崎とは知り合ってからすぐに意気投合し、最初こそ出会ったばかりとは思えない、この人と付き合うかも、とか考えたこともあったけど
今じゃ双子か?とたまに思うほどのフィット感。
一緒に暮らしたい、とさえ思うのだがそうするとお互いの婚期と恋愛問題に大きな支障が出る。
本当、上手くいかないものだ。


「俺も非番。久々にエッチでもする?」

「いいよ」

「荒れてんなー。慰めてあげるから元気だせよ、マグロとか萎えるし」

本当、なんでこんなことになったんだろう。

甘えていいよ、ってこういうことで合ってるよね?

山崎さんが私をどう思ってるか知りたい。
どうして私の全てを受け入れてくれるのだろう。




ずるいひと
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