やっと慣れてきた。
洗濯したり料理したり、
そして赤木さんが家に帰って来ること。

毎日"会う"んじゃなくて毎日"一緒"に居ること。

赤木さんの服や下着も私が洗濯して、寝る時は布団も隣り。

「あれ…?しげるさーん」

ベランダで洗濯物を干している間に赤木さんが居なくなってしまった。
煙草も置きっぱなしだしお茶も飲みかけのまま…
トイレにでも行ったのだろうか

唯一、未だに慣れないことと言えば "しげるさん"と呼ぶことだと思う
私の苗字も赤木さんになれたのがなかなか信じられない

空っぽになった洗濯かごを脱衣所に戻しに行くついでに辺りを見渡したがトイレに気配は無い。
黙って出かけたのか…、と少しショックを受けた。

「お邪魔しまーす」
「ただいま」

いつから出かけていたのかはわからないが天さんを連れて赤木さんが帰って来た。

「どこ行ってたんですか?」

「悪いな。天迎えに行ってた、もうすぐひろも来る」

「そうですか。今、お茶準備しますね」

「あ〜。これ一応お土産。」
と天さんから草加煎餅とスルメ。
お茶とお酒どっち出したら良いんだろ…

「ありがとう、天さん」 

とりあえず、日中からお酒出すのもあれだしお茶にすることにした。
お湯を沸かし、出かける前に飲んでいた赤木さんの湯呑みや灰皿を片付け、客席の準備をした。


ピンポーン、と呼び鈴がなると同時に「赤木さーん」
と呼ぶ声。
ひろゆきも来た。

「おー。上がれ」

「もう、ちゃんと玄関開けて!」
居間から動こうとせず、声だけで迎えようとするので私が代わりに玄関に出向く

「どうぞ」

「どうも、お邪魔します」

何かあるのかな。

「さくら、早く始めるぞ」

「え?なに…」

台所でお茶の準備をしている私を呼ぶので居間に顔を出してみた。

麻雀?

「私もやるの?」 

「やるだろ?」 


実は私、麻雀出来ない。
ルールはおおざっぱにはわかるんだけど…役覚えきれてないし…。点数計算はまったく出来ないし

「…麻雀、出来ない」

「…そうだったか。
まあ、大丈夫だからここ座れ」

既にセッティングされた卓。面子は私も入ってた…けど結局打てない。

なんで出来ると思われてたんだろ…

この日は三対一の麻雀講座になりました。

そろそろ切り上げないと洗濯物しけっちゃうよ…

私が麻雀覚えても誰にも勝てないはずなんだけど
どうして誘うんだろ?

やっぱり、赤木さんは何か遠い
いや、今は一番近くに居るはずなんだけど隠し扉を見つけた感じ…


、やっぱり百歩
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